ホークスの歩み

1955年

昭和30年(1955年)

チーム最高の打点(90)をあげた杉山光平


南海と西鉄の激烈な戦いだった。特に真夏の正念場で、なんと12回、目まぐるしく首位が交代した。そうした修羅場はベテランのそろった南海の方が強い。とくにこの年、山本一人監督の勝負への執念は、すさまじかった。
まず大映から飯島滋弥、トンボから深見安博、近鉄からトンボ経由の形をとった三角トレードで杉山光平と、実績はあるが、ベテランばかりを集めたのだ。狙いは大型化で、前年西鉄に奪われた覇権奪回の意欲の現われともいえた。結果、捕手が松井淳筒井敬三。1塁が飯島杉山。2塁に岡本伊三美が外野から復帰、三遊間は蔭山和夫木塚忠助森下正夫と幅が出た。外野陣は1塁から回った飯田徳治をはじめ堀井数男島原輝夫、それに深見もつとめられる、という厚みが備わった。

コンスタントに打ちつづけチームを引っ張り最高殊勲選手になった飯田徳治

チームに競争意識が高まり、それが進撃を早めた。飯島こそ足の故障ではずれたが、外野転向の飯田は.310でベストテン4位。安定した中心打者の評価を受け、最高殊勲選手にも選ばれた。杉山が.278、16本塁打をマーク、90打点がとりわけ光った。島原深見もそれぞれの場を守る成績を残している。
個別のことより、南海は機動力が抜群だった。主力の飯田でさえ42盗塁、「足の南海」といわれた中核をなす森下が59で盗塁王、木塚岡本がそれぞれ38、37盗塁と、出塁すると得点圏へ行く。相手はいつも戦々恐々だった。
もう一つ、見逃せないのは、山本監督の采配だ。エースに宅和本司(24勝11敗)と中村大成(23勝4敗)の両輪が前半宅和、後半中村とバランスよく健闘したのは大きかった。が、次のランクの投手陣は、山本継投策のやりくりで生きた。小畑正治13勝4敗、戸川一郎円子宏がともに12勝5敗。野母得見も左の持ち味を出した。
チームワークに乱れがなく、試合運びのうまさでリードした南海は、8月下旬ライバル西鉄に勝ち越すことで、3.5ゲーム差をつけた。西鉄はこれを境に、ずるずる後退していく。

(画像左)
首位の座奪還に執念を燃やした山本一人監督
(画像中央)
パ・リーグ最多勝投手(24勝)になった宅和本司投手
(画像右)
59盗塁で盗塁王になった森下正夫内野手

パ・リーグ成績

順位 チーム
西













1 南海 - 132 12 10 131 18 16 17 143 99 41 3 .707 -
2 西鉄 72 - 121 9 17 16 151 14 144 90 50 4 .643 9.0
3 毎日 8 81 - 151 14 13 11 16 142 85 55 2 .607 14.0
4 阪急 10 11 51 - 15 131 12 14 142 80 60 2 .571 19.0
5 近鉄 71 3 6 5 - 13 141 12 142 60 80 2 .429 39.0
6 大映 2 4 9 71 7 - 14 13 141 53 87 1 .379 46.0
7 東映 4 51 9 8 61 6 - 131 143 51 89 3 .364 48.0
8 トンボ 3 6 4 6 8 8 71 - 141 42 98 1 .300 57.0

南海内野陣。後列左から森下正夫、杉山光平、岡本伊三美、前列左から飯島滋弥、蔭山和夫、木塚忠助

南海バッテリー。後列左から野母得見、中村大成、戸川一郎、小畑正治、宅和本司の各投手、前列は松井淳(左)、筒井敬三両捕手

海ベテラン打者。左から杉山光平、深見安博、堀井数男、飯田徳治


南海-巨人4度目の対決。それまで巨人が26年は4勝1敗、27年が4勝2敗、28年が4勝2敗1分けと圧倒的な強さを見せてきた。つまり、苦手とカモの関係に似ていた。
ところが、この年は違う。南海が主導権を握り、一方的な巨人ペースをはねのけたのだ。いつも巨人の風下にいたくない・・・は、山本監督以下ナインが抱いた気持ちだったろう。過去3連敗している屈辱は「もうごめんだ」で固まっていた。
第1戦は別所と柚木進。ベテラン投手でスタートした。南海は1イニングだけで柚木から中村、さらに宅和と得意の継投戦略に出る。4回巨人・千葉のタイムリーで1点先制されるも、5回蔭山のスクイズで追いつき、1-1のまま10回表。巨人は走者を置いて、川上が宅和のカーブを右翼席に叩き込む2ランを放って、試合を決めた。別所は完投。4-1で巨人先勝である。
第2戦は南海が雪辱した。2回飯田が先制ホーマーを大友に浴びせ、局面を切り開くと、7回松井にタイムリーが出て、2-0。小畑中村のリレーで零封した。4併殺の巨人はリズムが狂いはじめた。
第3戦は舞台が巨人の本拠地、後楽園に移る。巨人は中尾の先発。南海は宅和。4回、森下先制タイムリー。8回、岡本のソロ・ホーマー。2点を入れた南海は5回から戸川をリリーフさせた。戸川のシンカーは巨人打線を併殺網にからめとる。2-0と南海の連続完封劇である。
雨で2日延びた第4戦。必勝を期して巨人は別所投入。しかし、エラーに泣く。1回先取点されたのは、3塁失から。しかも別所自らのボークが重なった。奮起した別所が同点タイムリーしたのは5回。そのまま8回まで進んだが、ここでまた内野にエラーが出た。それをきっかけに、木塚杉山飯田と中心打線に集中打が出て一挙4点。大勢を決めた。中村戸川とつないだ継投で5-2。南海は3連勝で王手をかけた。
第5戦、巨人は動きの悪いベテランを若手に代える。これが当たった。1回2走者を置いて、藤尾が3ランをたたきこむ。5-5の同点から、巨人は抑えの小畑を打ち込んで4点。9-5とした。これで別所を初めてリリーフに使い、万全を期しての2勝目。舞台は再び大阪へ回る。
第6戦の巨人の勝因は中尾の好投だった。1回いきなり無死満塁のピンチを安原から受け継ぎ、飯田を併殺打に打ちとった。その1点だけ。1回、川上、柏枝の長短打で2点。締めくくりに別所を投入し3-1で3勝3敗のタイに持ち込んだ。
第7戦、巨人は4連投の別所。南海は先発がおらず戸川。救援で2勝しているが、荷が重い。5回無死満塁で南村に犠飛を打ち上げられ1点を失う。それでも戸川中村4回ずつの継投はうまくいった。が、最後の小畑が打たれ3点。別所は4安打で南海を完封の4-0。巨人はシリーズ逆転優勝をやってのけた。
あと一歩と迫った南海。別所のような頼りきれる柱が不在だった。シリーズのような異常な雰囲気では、普段の力を出し切れない。山本監督、苦心の継投にも限界があった。

日本シリーズ成績

第1戦 南海1敗 10月15日 大阪22,448人(延長10回)
巨人 0 0 0 1 0 0 0 0 0 3 4
南海 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
第2戦 南海1勝1敗 10月16日 大阪27,784人
巨人 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
南海 0 1 0 0 0 0 1 0 X 2
第3戦 南海2勝1敗 10月18日 後楽園17,324人
南海 0 0 0 1 0 0 0 1 0 2
巨人 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
第4戦 南海3勝1敗 10月21日 後楽園19,373人
南海 1 0 0 0 0 0 0 4 0 5
巨人 0 0 0 0 1 0 0 0 1 2
第5戦 南海3勝2敗 10月22日 後楽園17,320人
南海 0 0 0 3 1 0 1 0 0 5
巨人 4 0 0 1 0 0 4 0 X 9
第6戦 南海3勝3敗 10月23日 大阪22,695人
巨人 2 0 0 0 0 0 0 0 1 3
南海 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
第7戦 南海3勝4敗 10月24日 大阪17,757人
巨人 0 0 0 0 1 0 0 0 3 4
南海 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
協力:(株)ベースボールマガジン社