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「野球の会社」から、その先へ
E・ZOビジネス部が描く、“世界一のエンタメ企業”への挑戦

みずほPayPayドーム福岡のすぐ隣。
そこに立つBOSS E・ZO FUKUOKAは、「野球のついで」でも、「ただの商業施設」でもありません。
今回話を聞いたのは、事業運営本部 E・ZOビジネス部 部長の勝呂さん。
施設運営と販促、その両輪を見つめながら、日々“正解のないエンタメ”と向き合っています。

「守る」と「仕掛ける」同時に走っている

E・ZOビジネス部は2課体制になっており、運営推進課と販促企画課に分かれております。

「まずは守る運営推進課。BOSS E・ZO FUKUOKAは365日動いています。
安心・安全に楽しんでいただける環境づくり。ここがすべてのスタートです」

来場者は、ファミリー層、観光客、インバウンド。
さらに、業務委託先企業まで含めると、E・ZOが向き合う“顧客”は、非常に幅広い存在になります。

「顧客接点が一番多い部門なので、現場で拾える声も多いんです。
その声を次のサービスにどう活かすか。そこまで含めて、運営推進の役割ですね」

そして、その“守り”があるからこそ、次のアクションが生まれます。

「販促企画課は、その安心・安全に支えられたアトラクションや体験を、どう伝えるか、どう仕掛けるかを考える部署です」

マーケティングの視点を取り入れながら、来る前の期待を高め、来たあとの満足度を上げていく。

「ただ情報を出すだけではなく、来たときに“やっぱり楽しい”と思ってもらえるかどうか。
そこまで含めて企画しています」

守る人がいて、仕掛ける人がいる。
ディフェンスとオフェンスが同時に回っているからこそ、E・ZOは“毎日同じではない場所”であり続けています。

繁忙期と閑散期。E・ZOの繁忙期は「休み」に紐づく

E・ZOの繁忙期は、実はプロ野球の開催時期とは少し異なります。

「春休み、夏休み、ゴールデンウィーク。いわゆる長期休暇の時期が、一番の繁忙期ですね」

一方で、6月のように雨が多い時期は、どうしても来館数が落ち込みやすい。

「だったら逆に、“雨の日も楽しいE・ZO”を打ち出そうと考えました」

降水確率100%なら100%割引、という大胆な施策。
そこにメディアも巻き込みながら、「天気に左右されない施設」という価値を発信していきました。

来てもらうこと。そして、知ってもらうこと。
その両方を設計するのが、E・ZOの販促です。

E・ZOの価値は、建物の中だけでは完結しない

BOSS E・ZO FUKUOKAは、ひとつの建物です。
ただし、その価値は、建物の中だけで完結するものではありません。

「E・ZOの中だけで、エンタメを完結させようという考え方ではないんです」
「ホークスが持っている強みは、E・ZOという建物だけじゃなくて、ドームや外周(デッキ)まで含めて使えることだと思っています」

屋内の施設、屋外の空間、そしてみずほPayPayドームのフィールド。
それらを組み合わせて使えるからこそ、“ホークスらしいエンタメ空間”が生まれます。

その象徴的な取り組みのひとつが、フィールド開放と王貞治ベースボールミュージアムの連動でした。

「E・ZOができる前は、ドームのフィールドにお客さまを入れるという発想自体が、決して当たり前ではなかったんです」

試合がない日に空いてしまったドームをどう活用するか。
そこで生まれたのが、フィールドに降り立ち、野球を“体感”する導線でした。

王貞治ベースボールミュージアムで野球の世界に触れ、その延長線上で、実際のフィールドに立つ。
マウンドに上がり、グラウンドを見渡す。

「E・ZOでの体験が、ドームの体験につながっていく。
それが自然にできたのは、この場所だからこそだと思います」

建物の中だけで企画を考えていたら、生まれなかった体験。
ドームや外周まで含めて“使える”環境があったからこそ、実現できた取り組みでした。

「E・ZOは、あくまで入口のひとつ。すべてを中に詰め込むのではなく、ドームや外周と組み合わせて考えることで、体験の幅が広がると思っています」

ホークスのボールパーク構想は、ひとつの建物で完結するものではありません。
エリア全体を使って、少しずつ体験を重ねていく。
その考え方を体現した事例でした。

最大の課題は、「E・ZO」というブランド

「正直に言うと、E・ZOという名前自体は、まだこれからのブランドだと思っています」

話題は自然と、E・ZOが抱える課題へと移っていきました。

福岡ソフトバンクホークスというチームは、長い年月をかけて地域に根付き、信頼と実績を積み重ねてきました。

「プロ野球というコンテンツ自体、日本に12球団しかない強いブランドですし、その中でホークスは、福岡の人であれば“知っている存在”になっていると思います」

一方で、E・ZOはどうか。

「E・ZOで何かやるらしい、という情報は届いても、“E・ZOだから行こう”という状態には、まだなりきれていないのが現実ですね」

その差は、日々の数字にも表れます。
野球事業は、過去の実績や蓄積されたデータをもとに、ある程度の来場や売上を見通すことができます。
しかし、E・ZOはそう簡単にはいきません。

「外部要因に、ものすごく左右されるんです」

天候、地域イベント、コンサート、さらにはホテル価格の高騰や観光動向まで。
少しの環境変化が、そのまま来館数や売上に影響します。

「野球事業は、多少外の状況が変わっても、大きくブレない強さがある。でもE・ZOは、まだそこまでの耐久力がないんです。色々な事が来館数に影響します。」

比較対象がないことも、難しさのひとつです。

「似た施設がないので、“あそこがこうだから、うちはこうしよう”という考え方ができないんです」

マニュアルも、正解例もない。ゼロから試し、学び、修正していくしかありません。

「だからこそ、ひとつひとつの取り組みを通じて、『E・ZOがやるなら面白そう』
『E・ZOなら安心できる』そう思ってもらう必要があると思っています」

派手な一発よりも、積み重ね。
短期的な話題性よりも、信頼。

「時間はかかりますが、地域に愛され、信用されるブランドになっていくしかない。
そこが、E・ZOの一番の課題であり、同時にやりがいでもあります」

E・ZOは、まだ成長途中です。
だからこそ、挑戦の余地があり、自分たちの手で“ブランドをつくっていける”。
その実感が、勝呂さんの言葉の奥にありました。

野球の会社、だけど野球だけじゃない。

E・ZOビジネス部は今日も、「世界一のエンタメ企業」というゴールに向かって、正解のない挑戦を続けています。

次にE・ZOを訪れたとき、そこにはまた、新しい景色が広がっているはずです。