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「掛け合わせの発想で、グッズの未来をつくる」
マーケティング本部MD事業部 部長・緒方さんに聞く、ホークスのモノづくりとこれからの挑戦。
みずほPayPayドーム福岡のコンコースを歩けば、目に飛び込んでくる色とりどりのグッズ。
選手のユニフォームや応援アイテム、かわいらしいマスコットグッズから、普段づかいできる雑貨まで――。
そのひとつひとつの裏側には、ファンの笑顔を思い浮かべながら商品を生み出す社員たちの努力がある。
そんな“ホークスのモノづくり”を支えているのが、マーケティング本部 MD(マーチャンダイジング)※1事業部だ。※以下、MD
部を統括する緒方さんに、MD事業部の全体像と、グッズを通して描く未来について話を聞いた。
「企画・販促・購買」――チームで生まれるヒット商品の裏側
「MD事業部には現在、『MD企画課』『MD販促課』『購買課』という3つの課があります。
それぞれの専門性を活かしながら、三位一体でグッズづくりを進めています。」
緒方さんがそう語るように、ホークスのグッズが世に出るまでには、綿密なチームワークが欠かせない。
まず「MD企画課」が商品を生み出す起点を担う。
客観的に見たホークスのイメージを形にしながら、ファンの生活やトレンドを読み取り、「こんなアイテムがあったら楽しいよね」といったアイデアを形にしていく。また、ホークスのロゴやキャラクターを生かして、他企業とコラボした商品を展開するライセンスビジネス※2もこの課の重要な仕事だ。
「単に“作る”だけではなく、どう売るか、どう伝えるかまでを考えるのが企画課の役割です。
ファンの皆さんの手に届く瞬間をイメージしながら、企画を進めています。」
続く「MD販促課」は、いわば販売の“現場司令塔”だ。
現在はファナティクス・ジャパンとパートナーシップを結び、販売・プロモーション戦略を共に考えている。
「どうしたらもっと多くの人に商品を届けられるか。
売場の見せ方、キャンペーンの仕掛け、SNSを使った発信など、さまざまな角度から議論しています。
“モノを売る”のではなく、“体験を届ける”という意識ですね。」
そして「購買課」は、商品の企画を現実に落とし込む最終工程を担う。
商品の発注や生産管理、品質チェックなど、ものづくりの根幹を支えている。
「購買課には、商品を作るチームと、配布物などを担当するSP購買チームがあります。
どちらも“ホークスクオリティ”を守るため、社内基準に沿った品質審査を行っています。
ファンの皆さんの手に渡るものだからこそ、安全性と信頼を最優先に考えています。」
「情報と情報の掛け合わせ」で、新しい価値をつくる
ホークスのグッズは、アパレルから雑貨まで実に多様だ。
そのアイテム数は年間約3,000点、SKU(管理単位)※3で言えば2万点にも及ぶ。
世界のスポーツクラブと比べても、圧倒的な商品数を誇るという。
「ここまで幅広いグッズ展開をしているスポーツチームは、世界でも珍しいです。恐らく世界一の規模かと。
MLBや欧州サッカーはアパレル中心ですが、日本は雑貨や日用品まで広がっている。
その中でもホークスは、“多様なグッズ展開”という強みを持っています。」
とはいえ、これだけの商品を展開していく中で、新しいアイデアを出し続けるのは容易ではない。
そんな中、緒方さんが大切にしているのが“掛け合わせ”の発想だ。
「今の時代、ゼロから新しいものを生み出す必要はありません。
すでに世の中にある情報や商品をどう掛け合わせるか――そこに新しさが生まれると思っています。
たとえば色や素材の組み合わせ、異業種とのコラボなど。
その掛け合わせ方がユニークだと、“これは新しいね”となりファンの方にも響くんです。」
△2025年に販売したクレヨンしんちゃんコラボグッズ
“7勝3敗”でいい――挑戦する文化が未来をつくる
「ヒット商品を作るのは簡単ではありません。私は“7勝3敗”でいいと思っています。」
緒方さんは、数字でそう語る。
完璧を目指すのではなく、あえて失敗も受け入れながら挑戦を続ける――それがホークスのMD事業部の文化だ。
「3敗は“攻めた証拠”です。
守りに入って10戦全勝できたとしても、そこに新しい発見は生まれません。
むしろ3敗があるからこそ、次の挑戦ができる。新しいトライが、次のヒットにつながるんです。」
商品開発において“攻め”を恐れない姿勢は、ホークスのグッズの幅を広げてきた原動力になっている。
2年をかけて実現した「ポンプ式ジェット風船」
中でも、緒方さんが特に思い入れを持つのが「ポンプ式ジェット風船」だ。
「コロナ禍で、口で膨らませるタイプの風船が使えなくなってしまったんです。
それでも、あの一体感を取り戻したい。
その想いから、開発チーム全員でゼロから仕組みを考え直しました。」
手動ポンプで空気を送り込む構造を採用し、誰でも安全に楽しめる形を目指した。
コスト面や使いやすさを追求し、何度も試作品を作り直したという。
「安く、安全で、誰でも扱えるものにする。
その条件をすべて満たすのに、約2年かかりました。試行錯誤の末に今の形ができあがったんです。」
完成したポンプ式ジェット風船は、今やホークスだけでなく他球団やBリーグチームにも広がっている。
ホークス発のモノづくりが、日本のスポーツ文化に新しい風を吹き込んだ。
「長い時間をかけて形にしたからこそ、多くの方に喜ばれていることが嬉しいですね。
他球団にも採用いただき、“ホークスの開発力”を感じてもらえたと思います。」
ホークスのノウハウで、スポーツビジネスを広げたい
「スポーツマーチャンダイジングの市場は、まだまだ伸びしろがあります。
この10~20年で確実に成長していますが、まだやれることはたくさんあると感じています。」
緒方さんは、ホークスで培ったノウハウを他のスポーツチームやクラブにも広げることで、業界全体を盛り上げたいと語る。
「ホークスとして積み上げてきた経験を、他球団や他競技のクラブにも活かすことで、日本全体のスポーツビジネスを発展させたいと思っています。
それが結果的に、ホークスの成長にもつながるはずです。」
また、グループ会社との連携もMD事業の強みの一つだ。
グループ会社でもある、> レッツ社との情報共有によって他競技のトレンドを学び、新しい発想を生み出している。
「レッツが持つ他スポーツの知見と、ホークスが持つMDの経験。
その掛け合わせが、次のビジネスチャンスを生むと思っています。」
掛け合わせの先にある“未来”を描いて
「グッズづくりは、単にモノを作る仕事ではありません。
ファンの笑顔を生み出し、球場の雰囲気を作り、チームの存在価値を広げる。
そんな思いを込めています。」
緒方さんが語る“掛け合わせ”とは、単なる商品開発の手法ではなく、ホークスの未来をつくるための哲学でもある。
「ファンとチーム、社員と企業、野球と他のスポーツ。
さまざまなものを掛け合わせていく中で、ホークスの新しい形が見えてくると思います。
これからも挑戦を続け、未来のスタンダードを自分たちでつくっていきたいですね。」
※1 MD(マーチャンダイジング):グッズの企画・製造・販売を通じて、ファンとチームの接点をつくる仕事。
※2 ライセンスビジネス:ホークスのロゴやキャラクターなどの知的財産を活用し、他企業とコラボレーション商品を企画・展開する取り組み。
※3 SKU(エスケーユー):商品を管理する最小単位のこと。同じデザインの商品でも、サイズやカラーが違えば別のSKUとして管理される。