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「簡単ではない。でも、やりがいは確かにある」
ライブ&イベント部 部長 仁田さんが語る、自主興行の仕事
みずほPayPayドーム福岡では、野球以外にもさまざまなライブやイベントが開催されています。
その運営を担っているのが、エンターテインメントビジネス本部 ライブ&イベント部 ドーム事業課です。
今回は、ホークスが主催する「自主興行」、そしてFUKUOKA MUSIC FES.(福フェス)を通して、見えてきた「0から1をつくる仕事の厳しさ」について話を伺いました。
年間のイベント数は「約30件」。そのうち約3分の1が“ホークス主催”
みずほPayPayドーム福岡では、プロ野球の試合が行われない日にも、さまざまなライブやイベントが開催されています。
その数は年間でおよそ30件。コンサートを誘致する貸館興行 ※1を中心に、多様なジャンルのイベントがドームを舞台に展開されています。
その中で、ホークスが自ら企画・主催しているのが自主興行です。現在は年間9件。
2025年は、自主興行として音楽フェスの「福フェス」や、ペット好きのための「Pet博」など、ジャンルの異なるさまざまなイベントを実施しています。
件数だけを見ると一部の取り組みに見えるかもしれませんが、自主興行は「ドームを貸す」のではなく、「ドームで何を生み出すか」を自分たちで考え、形にしていく仕事。
この取り組みは、ここ数年で少しずつ広がりを見せています。
ホークスが自主興行に力を入れている理由
自主興行が増えている理由について、仁田さんはとてもシンプルに話してくれました。
「なぜ増えているかというと、めちゃくちゃ頑張っているからです(笑)」
背景にあるのは、貸館興行と自主興行の違いです。
「貸館興行は、ドームを借りたい主催者と、ドームが空いている日程が合わないとビジネスが成り立ちません。
また、貸し出せる日程にも上限があるので、“貸し出す定価 × 貸せる日程”が、そのまま売上の上限になります」
一方で、自主興行は違います。
「自主興行は、自分たちが頑張れば頑張るだけ収益を上げられる。
チケットや飲食、グッズ、法人向けのスポンサー協賛など。事業の成長に天井がないんです」
野球のスケジュールから生まれた発想
もうひとつ、自主興行に取り組む理由があります。
「野球って、基本的に1カード3連戦じゃないですか。
火水木、金土日で試合が組まれて、ホームとビジターを行き来します。
その関係で、土日にドームが空くことがあるんです」
一方で、ドームでコンサートを開催する場合は、設営・リハーサル・本番を含めて、少なくとも4日間が必要になります。
「だから、ビジターに行っていてドームが空いているからといって、コンサートを入れることはできない。
その3日間が、正直もったいないなと思っていました」
そこで、その期間に、ペットイベントや焼酎フェアなど、3日間で完結できる自主興行を入れていくようになりました。
「イベントがあれば売上にもなりますし、お客さまが来れば、コンコース内の飲食の売上も上がる。
ドーム全体で相乗効果が出てくるので、そこはかなり力を入れています」
福フェスは「ゼロからつくる」仕事だった
自主興行の中でも、代表的なものがFUKUOKA MUSIC FES.(福フェス)です。
現在の体制でスタートしたのは、2022年1月。
「最初は、かなり大変だったと聞いています」
仁田さん自身は当時の担当ではありませんが、新しいことに挑戦する立場として、こう語ります。
「誰もやったことがないことをやる。
ゼロから1をつくるのは、どんな仕事でも難しいと思います」
やり方が決まっていないからこそ、まずは調べるところから始まる。
「フェス自体は世の中にあります。ホークスではやっていなかっただけ。
だから、フェスを知っている人を探して、話を聞いて、力を借りながら進めていく。そういうやり方になります」
認知がない状態から、どう広げていくか
福フェスならではの難しさもありました。
「アーティストさんからすると、見たこともないフェスに出演することになりますし、お客さまからすると、どんなフェスか分からないものにチケットを買うことになる。
これは正直、かなり難しいです」
特にドーム規模となると、動員数も大きくなります。
「小さい会場とはレベルが違う。
広告を見て“行ってみたい”と思ってもらえないと、お客さまは来てくれない。
最初は、ここが一番大変でした」
開催2回目以降に変えたこと
仁田さんは2022年1月にライブ&イベント部へ異動し、2023年の福岡フェスから本格的に関わることになります。
具体的に取り組んだのが、社内を巻き込むことでした。
「ブランド推進部を巻き込んで社外へのプロモーションを強化したり、
飲食部門と協力してフェス飯を一緒につくったり、
アーティストさんのケータリングもこだわったり、
法人スポンサー向けの商材をつくって営業本部に販売してもらったり。
ありとあらゆることに着手しました」
自部署だけでは成り立たない。
「社内外のステークホルダーを巻き込み、福フェス成功に向けて推進していく。
失敗したら、次年度以降なくなるかもしれない。
そんな危機感を持ちながら仕事を進めていました」
※フェスグルメとして、アーティストメニューやイベント限定グルメが約30種類登場
動員は右肩上がり。でも簡単ではない
● FUKUOKA MUSIC FES. 2022:約18,000人(※1日開催)
● FUKUOKA MUSIC FES. 2023:約24,000人(※1日開催)
● FUKUOKA MUSIC FES. 2024:約35,000人(※2日開催)
● FUKUOKA MUSIC FES. 2025:約49,000人(※2日開催)
「お陰様で観客動員数は年々増加しております。
ただ、毎年毎年お客さまの期待を超えるエンタメを提供し続け、アーティストさんからもお客さまからも福フェスに対する信頼を得て、その信頼・期待に応え続ける。
そのバランスを取り続けることが、この事業の難しさです。」
自主興行の大変さは「事業として考えること」
「事業の大変さで言えば、貸館興行と比べると、どう考えても自主興行の方が大変です」
まずは案件を引っ張ってくる。
収支が合うかを見極める。
やると決まったら、実務は一気に増える。
「貸館興行より業務量は何倍にもなります。その分、収益性が高いのが特徴です。
ただ、来ていただいたお客さまに満足してもらうためにも、毎年同じことをやるわけにはいかない。
毎年アップグレードし続けなければならない大変さもあります」
福フェスに込めている想い
最後に、仁田さんの福フェスへの想いについて聞きました。
「若い人たちにとって、一生の思い出として残るフェスになってほしい。
青春時代に聴いた音楽が、何年後かにふっと蘇る。
そんな存在でありたいですね。
音楽って、時に人生の支えになると思うんです。
その一端を担えていることは、すごく嬉しいです」
華やかなイベントの裏側には、数字と向き合い、調整を重ね、地道に積み上げる仕事があります。
それでも、自分たちでつくったイベントで、誰かの思い出が生まれる。
それが、ホークスのエンターテイメントをつくる自主興行の仕事です。
※1 貸館興行:ドームを主催者に貸し出し、イベントを実施する形式
※2 スーパーボックス:ドームの4・5・6階からグラウンドを一望できる、特別な体験を提供する空間