ホークスの歩み
昭和41年(1966年)
後半、エース級の活躍(16勝)で南海優勝に貢献した渡辺

3連覇を狙う南海が、5月5日にトップに立って、そのまま逃げ切った。しかし独走だったわけではない。再三のピンチをしのぎ切っての優勝で、優勝決定は自軍の全試合が終了した後、まだ4試合を残している西鉄が負けるのを待ってのことだった。西鉄が残りを全勝すれば同率になってプレーオフになるところだったが、西鉄があっさり東映に負けて、南海の3連覇となった。 優勝できたのは、試合運びのうまさと、国貞泰汎、渡辺といった若手をうまく使いこなした鶴岡起用。そして18勝7敗をあげた皆川の活躍、ベテランの代打・杉山光平がいいところで打ったからだった。 この年の南海は蔭山和夫が指揮をとるはずだった。しかし、蔭山は65年11月13日に監督就任が決定してわずか4日後の17日に急逝。予想だにしなかった事態に一度は退団した鶴岡一人が急遽復帰した。
とにかくチームの雰囲気を前向きにして変えていかなくてはと、杉浦忠を投手コーチに、杉山光平を打撃コーチにそれぞれ就任させた。このテコ入れは功を奏したようで、南海は開幕から6試合で5勝1敗と好スタートを切った。 しかし、SFジャイアンツで日本人として初めて勝ち星を記録、大きな期待を背負って日本のマウンドに戻ってきた村上が、大きく期待を裏切る誤算。村上は6勝4敗、完投ゼロに終わった。 また、前年17勝3敗と素晴らしい投球を見せた林が、左ヒジ痛に悩まされわずか4試合にしか投げられず勝ち星ゼロというのも痛かった。首脳陣の「2人で20勝」という計算は完全に狂ってしまった。 しかし鶴岡親分が手塩にかけて育てたチームは、苦しい時こそその底力を発揮する。その象徴的な試合が5月14日の阪急戦(大阪)だった。9回二死で4対7と敗色濃厚の場面で主砲・野村克也が石井茂雄から劇的な逆転満塁サヨナラ本塁打。2日前の12日に大阪球場で西鉄・田中勉に球団史上初の完全試合を食らったばかり。その屈辱も、野村の一発が吹き払ってくれた。こういう戦いができるのが鶴岡南海の強みだった。杉浦、スタンカといったスーパーエースがいてこその南海のVというのが、それまでだったが、この年は皆川の18勝が最多で、渡辺泰輔16勝、三浦清弘15勝、合田栄蔵10勝と20勝投手は出なかった。それでもV3を達成したのは、西鉄にはないチームのまとまりがあったからだ。
パ・リーグ成績
順位 | チーム | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | ゲーム差 | 打率 | 防御率 | 本塁打 |
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1 | 南海 | 133 | 79 | 51 | 3 | .608 | - | .245 | 2.59 | 108 |
2 | 西鉄 | 138 | 75 | 55 | 8 | .577 | 4.0 | .231 | 2.13 | 125 |
3 | 東映 | 136 | 70 | 60 | 6 | .538 | 9.0 | .256 | 2.75 | 91 |
4 | 東京 | 134 | 61 | 69 | 4 | .469 | 18.0 | .240 | 2.93 | 112 |
5 | 阪急 | 134 | 57 | 73 | 4 | .438 | 22.0 | .229 | 3.31 | 89 |
6 | 近鉄 | 133 | 48 | 82 | 3 | .369 | 31.0 | .228 | 3.60 | 100 |
第1戦から第3戦まで連続先発した渡辺泰が敢闘賞に
南海はペナントレースでは渡辺、皆川睦男がよく働いたが、左打者の多い巨人にアンダースローの皆川が通用しないとみて、渡辺ひとりに頼る結果となった。渡辺はパーム、フォークと変化球中心で、第1戦を除けば好投したが、かつての杉浦忠、スタンカのようなわけにはいかなかった。米大リーグ留学から戻った村上雅則はリリーフとして注目されたが、振りの小さい日本の打者にはあまりその特徴を発揮できなかった。南海はこの年も内・外野にタイムリーエラーが多いのが目立った。
日本シリーズ成績
第1戦 南海1敗 10月12日 後楽園27,145人 | 計 | |||||||||
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南海 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 5 |
巨人 | 2 | 0 | 2 | 0 | 4 | 0 | 1 | 3 | X | 12 |
渡辺泰● 城之内○ (本)堀込 国貞(南) 長嶋(巨)
第2戦 南海1勝1敗 10月13日 後楽園27,395人 | 計 | |||||||||
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南海 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 5 |
巨人 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 |
渡辺泰○ 堀内● (本)中島 小池(南) 柴田(巨)
第3戦 南海1勝2敗 10月16日 後楽園29,978人 | 計 | |||||||||
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巨人 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 3 |
南海 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
城之内○ 渡辺泰● (本)王(巨)
第4戦 南海1勝3敗 10月17日 大阪30,178人 | 計 | |||||||||
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巨人 | 0 | 2 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 8 |
南海 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
金田○ 皆川● (本)王(2)柳田(巨) 穴吹(南)
第5戦 南海2勝3敗 10月18日 後楽園19,791人(延長13回) | 計 | |||||||||||||
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巨人 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
南海 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2X | 4 |
中村● 合田○ (本)長嶋(2)(巨) 小池 ハドリ(南)
第6戦 南海2勝4敗 10月19日 後楽園29,112人 | 計 | |||||||||
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南海 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
巨人 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | X | 4 |
皆川● 益田○ (本)柴田(2)黒江(巨)