【10月29日（水）　SMBC日本シリーズ2014　ホークス5×‐2タイガース　ヤフオクドーム】

その瞬間、誰もが白球を目で追いかけた。「行け！」。バットを振り抜いた中村晃選手は「打った感触は良かったけど、ファウルになるかも」と思った。しかし、すぐに確信に変わった。「やった！！！」。両手を広げて万歳し、飛び跳ねるようにベースを1周しました。

ついに日本一に王手をかけました。10月29日（水）の「SMBC日本シリーズ2014」第4戦は、劇的な、本当に劇的な結末。延長10回裏、中村選手のサヨナラ3ランホームランで勝負は決しました。

苦しんだ男が放った会心の一撃にチームのムードも最高潮です。中村選手は今季パ・リーグ最多安打のタイトルを獲得する大活躍。しかし、ポストシーズンでは思うような打撃が出来ていませんでした。CSでは打率.077とまさかの大不振。そして、シリーズでも前日までの3試合は11打数1安打で打率.091と信じられない数字が並んでいました。

それでも、中村選手はふさぎ込むことなく、懸命に練習にも取り組んできました。「本当に迷惑をかけたと思っています。でも、たとえ打っていなくても、チームが勝てばいいと思いながらプレーしていました。だから気持ちは少しラクでした」。この日は第1打席で安打を放ち、その後は凡退するも内容の良い打席を送っていました。そしてサヨナラの打席。「初球は（体が）前に突っ込み過ぎていたので、意識して軸足に少しずつ残すようにして、ファウルを打つごとに良くなっていきました」と、25歳ながら「打撃職人」と言われる冷静な自己分析と巧みな技術を発揮できる状態にまで、調子を取り戻していました。

また、帝京高校時代は通算60発を放ったスラッガーですが、「サヨナラホームランは記憶にない」といいます。「こんな大舞台で打つことができて、最高の一発でした」と話しました。

そして、この劇的ホームランを生むためのプロセスも見逃せません。同じく調子の上がっていなかった松田宣浩選手に2点タイムリーヒットが出たのは好材料。投手では2番手で登板した東浜巨投手が3回無失点の好投で、相手に流れを渡しませんでした。

秋山幸二監督は「シーズン、CS、そして日本シリーズと戦って来て、第5戦がヤフオクドームでの今年最後の試合。ぜひとも勝ちたいですね」と高らかに宣言。3年ぶり日本一まであと1勝。今年3度目の歓喜は、やはり地元福岡で！