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1回裏2死一塁、右越え2点本塁打を放つ松中選手 |
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1回裏2死一塁、松中選手は右中間に2点本塁打を放ちペタジーニ選手に迎えられる |
松中信彦選手が、こん身のひと振りで小久保離脱ショックを振り払った。首痛と左肩痛で出場選手登録を抹消された小久保裕紀選手に代わり、ヤクルト戦(ヤフードーム)に5番で先発。1回、館山投手から3号2ランを放った。4月6日ロッテ戦で2号を記録してから56日間ノーアーチと、自己最長ブランクを更新していたが、自らのバットで交流戦貯金1と、再び白星を先行させた。
万全でなくても、技術がある。松中選手が技ありの復活弾だ。1点を先制した直後。1回裏2死一塁。カウント2-0からの低めフォークを打った。流れる上体を右ひざで受け止め、すくった打球は、右中間スタンド最前列へ。3号2ランだ。
松中選手「本塁打は出ていなかったけれど、いつかは出ると思っていた。」
長かった。4月29日に登録抹消され、5月22日に1軍復帰。1軍の舞台に戻り、28打席目。4月6日以来の1発となる「56日ブランク」は自己最長。だが、苦難の連続となったプロ14年目は、漫然と過ごしていたわけではない。新たな打撃フォームに取り組んでいた。タイミングをとる際、右足を細かく動かす。12月に37歳。豪打で鳴らした時代とは違うスタイルだが、現状にフィットさせるフォームを探求し、結果につなげた。
この日、5番に入った。1日は小久保選手が5番にいた。その主将が首痛と左肩痛で戦線離脱。昨年まで通算37度のアベック弾を飾ってきた先輩が、無念の思いでグラウンドを離れた。わずかな言葉だけでわかり合える間柄。前夜、小久保選手から「やっぱり、ダメだ」と声をかけられた。2軍を経験した松中選手らしく、ジョークで「(2軍で自己調整となる)放牧は大変ですよ」と答えたが、内心は誰よりも奮い立っていた。
主将不在の危機を救い、交流戦貯金1と再び白星を先行させた。秋山幸二監督も「ノブヒコの1発が効いた。大きいのを期待しているからね」とたたえた。それでも松中選手は満足しない。「やっぱり、まっすぐをキッチリ仕留めたい」。今季3本のアーチは、すべて変化球を打ったもの。そして、言った。「(小久保選手離脱は)みんなでカバーしないといけない。チームが勝つために最善を尽くしたい」。主砲として、まとめ役として、背番号3にかかる期待は増すばかりだ。