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3回裏1死満塁、松中選手は右越え満塁弾を放つ |
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3回裏1死満塁、右越え満塁本塁打を放った松中選手は秋山監督に迎えられる |
これが主砲だ。松中信彦選手が巨人4回戦(ヤフードーム)で、通算10本目となるグランドスラムを放った。3回に先制4号満塁弾を打ち、これで3試合連続V打をマーク。交流戦3連覇は逃したが、チームは4連勝を飾って、貯金も今季最多11。リーグ戦で首位西武に1ゲーム差と迫る大きな白星を巨人から挙げた。
邪心も気負いもなかった。松中選手は2つだけ、思っていた。「ゲッツーを打たないこと、最低でも犠牲フライ」。3回裏1死満塁。初球をファウルし、2球目だった。緊急登板した巨人黄志龍投手の直球が内角に入ってきた。腰を切るように回転させてとらえた打球は、低い軌道を描いて右翼席へ。通算10本目のグランドスラム。わずかに詰まらせファウルにしない、松中選手らしいバットさばきから、節目の1発は生み出された。
主砲の仕事。先制満塁弾が効いて、チームは4連勝。3試合連続の決勝打だ。2004年に3冠王に輝いたスラッガーが言う。「本数よりも、ここぞの場面で打ちたい。チームに貢献する一打を」。今季4号だが、初めて直球をスタンドに運んだ。「今年のスタートが切れたかな」。チーム65試合目。自身は昨年10月に右ひざを手術した影響で出遅れたが、左手首打撲のためオーティズ選手を欠いた打線で、最高の“船出”を切った。
尊敬する秋山幸二監督、王貞治球団会長を超えた。満塁弾10本目は、同9本の秋山監督を抜いてパ歴代で単独5位。4年連続グランドスラムは、15満塁弾のプロ野球記録を持つ王会長でもできなかった。秋山監督が「うまいこと(ファウルに)切れずに巻き込んでいった」と技術に舌を巻けば、王会長からは「10本でも20本でも打ってほしいね」と強烈エールが飛んだ。
松中選手「王会長からは、いつも真っすぐを仕留めろと言われる。それが長くやる秘訣(ひけつ)だと」
『世界の王』のアドバイス通り、直球打ちで快挙を達成してみせた。
交流戦3連覇はできなかったが、チームはリーグ優勝を目標に結束している。今季、松中選手がストライクを見逃す度、味方ベンチからヤジが飛ぶ。「振れ!振れ!」。声の主は、選手会長の川崎宗則選手だ。
松中選手「いやあ、初球から振らないと川崎がうるさいんで。楽しくやれてますよ」
貯金11は今季最多。首位西武にも1ゲーム差だ。この日の9回表。いつものようにベンチの最前線で激励した。振り返ると、若手野手陣も立って応援していた。「チームは助け合い」と松中選手。右ひざが万全でなくDH出場した主砲は、結束を示す言葉も残した。「(一塁を守った)ペタちゃんに感謝です」。