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7回表、マウンドの近くにハトが舞い降りて投球を待つ和田投手 |
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7回表、マウンドに降り立った数羽のハトを追う和田投手 |
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9回3安打無失点の好投を見せた和田投手 |
勝ちに等しい、価値ある快投だ。和田毅投手が3安打無失点で9回を投げきった。7四球を与えながらも、辛抱強く低めをついた。今季16試合目の登板で初めて勝敗がつかずにマウンドを譲ったが、延長戦での続投を直訴までした魂の144球がチームの白星を呼んだ。
ロッカーから"出遅れ"で歓喜の輪に加わった和田投手の顔には、勝利投手のような満面の笑みがあった。今季最多144球を投げきったはずの体が軽い。「体力的にはまだいける感じでしたよ」。9回を3安打無失点。リーグ単独トップに立つ12勝目は逃しても、心地よい疲労感に包まれていた。
直訴の続投だった。「自分で白黒つけたいです」。7回終了時点で124球。ベンチで高山郁夫投手コーチに問われると、即座に意思を口にした。過去15試合の登板で11勝4敗と、今季はすべて自分で決着をつけてきた。「先発でマウンドに上がる以上、勝ち負けは自分でつけたい」。譲れない思いを胸に、ロッテ成瀬投手と息詰まる投手戦を演じた。
今季最多の7四球は「10年型投球スタイル」でもあった。「低めに投げるのを一番意識した」。それだけに安打を3本にとどめられた。愚直なまでに、ひたすらローボールを投げ込む。ここに昨季までとの違いがある。
和田投手「去年までは高めの直球で空振りをとってやろうという気持ちが強かった。(今年は)低めに投げて打たれたらしょうがないと思って投げている。」
29歳の円熟期を迎えてたどり着いた境地。力任せではなく、細心の注意を払って投げているからこそ、今季は大崩れしない。毎回の投球前には両腕を横に広げて腰を左右に振る。独特の"和田ダンス"で体幹を使って投げる感覚を確かめた上で、1球ごとに精魂を込めて投じている。
7回2死一塁の場面ではグラウンドに5羽のハトが降りたって中断したが「球が当たらなくてよかった」と気づかう余裕?まであった。完封勝利を飾った昨季開幕戦(4月3日オリックス戦)以来463日ぶりとなる9回0封。「意地のぶつかり合い。勝ちがつけば最高だったけど、野球人として楽しかった」。もう誰も、完全復活を疑う者はいない。