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ホークス先発の和田投手 |
和田毅投手は大量援護に守られ、リーグ単独トップの12勝目を挙げた。前回10日ロッテ戦で144球を投げた疲労もあって本調子を欠き、直球は137km/hが最速だったが、6回を6安打1失点に粘った。同僚の杉内俊哉投手と西武涌井投手を突き放し、再びハーラーダービーで1歩リードした。
マウンドで和田投手が首をかしげる。いつもと違う-。のしかかるような疲労感が背番号21を包んでいた。「少し体が重く感じた」。直球は最速でも137km/h。本調子にほど遠くても、負けるわけにはいかない。真価の問われる逆境で、歯を食いしばった。
いきなり正念場が訪れた。5点のリードをもらった直後の2回裏だ。本来のキレを欠く球を先頭のT-岡田選手とセギノール選手にとらえられ、連続二塁打であっさり1点を失った。続くバルディリス選手にも四球を与えて無死一、二塁。せっかく奪った試合の主導権を手放しかねないピンチを迎えた。
和田投手「ブルペンでも(球が)いってなかったし、試合でも140km/hも出ない。疲労もあったと思う。粘りながら、打ち損じを誘っていった。」
我慢強く、今季の生命線となっている低めへの投球を徹底した。日高選手はスライダーで遊飛、山崎浩選手は直球で見逃し三振、浜中選手はスライダーで二ゴロ。いずれもコースぎりぎりのローボールで仕留めた。6回6安打1失点は、細心の注意を払った結果だった。
疲労感の原因は1週間前にあった。「前回投げすぎたので…」。10日のロッテ戦では成瀬投手と投げ合い、互いに9回までゼロを並べた。延長戦に入って両者とも降板。「根比べで、投げていて楽しかった」と振り返ったが、極限状態で投げた144球の反動は、中6日では抜け切らなかった。ただ、残ったのは疲れだけではなかった。
熱投から一夜明けた翌11日の夜、携帯電話が鳴った。画面に出た着信相手の名は「成瀬善久」。電話越しに互いの健闘をたたえ合い、次なる闘志がわいた。ロッテのエース左腕にも反動が出たのか、この日の西武戦で9失点を喫して敗れた。だが、和田投手は勝った。リーグ単独トップに立つ12勝目だ。「チームのおかげでここまで勝てている。後半戦も辛抱強い投球をしたい。1勝の重みも大きくなるんで」。不調でも負けない。だからこそ、並み居るエースたちの頂点に君臨している。