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5回裏1死二塁、左前に先制の適時打を放つ田上選手 |
田上秀則選手が攻守にわたる活躍で獅子撃破に貢献した。守ってはエース杉内俊哉投手を好リードし西武打線を完封。打っては5回に貴重な先制適時打を放つなど今季2度目の猛打賞。西武に対し今季5カード目で初の勝ち越しをもたらした。7回には松田宣浩選手が10号ソロで6連勝を近づけた。球宴前のライバル対決で、投打ががっちりかみ合った。
最高の快感が、最後の最後にやってきた。9回裏2死。田上選手が、打者栗山選手のひざ下付近にミットを構える。杉内投手の投じた内角低めいっぱいの直球が、ミットに吸い込まれた。見逃し三振。捕手として最大の快感に白い歯をこぼし、右の拳を握りしめた。「杉内が完封できたことが、何よりもうれしい」。決勝打を含む3安打を放った男は、女房役らしくそう話した。
かたき討ちだった。西武には前回まで、開幕から4カードすべてで負け越し。中でも前回の3連戦(6月18~20日)は屈辱的だった。9番細川選手に3戦連発を食らって3連敗。自身は2軍調整中で、先発マスクは山崎勝己選手がかぶっていた。
山崎選手とはライバルでありながら、プライベートで大の仲良し。その親友は、このカード3戦目で左ひざ半月板を損傷し長期離脱を余儀なくされた。無念の思いは痛いほど感じていた。この日は細川選手を無安打に封じるだけでなく、打線を散発4安打に抑え、5カード目で初の勝ち越し。「(山崎)勝己には、早くよくなってほしい」。互いを認め合い切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲だからこそ、その言葉も自然と出る。
打撃も完全に復調した。5回に左前へ貴重な先制適時打を放つなど、今季2度目の猛打賞。極度の打撃不振で2度目の2軍降格となった5月下旬には、左手薬指の靱帯(じんたい)も痛めた。どうしようもない焦りを抑えきれず、お酒の力に頼った日もあった。
それでも自分のため、山崎選手のためにも愚直にやるしかなかった。16日オリックス戦(京セラ)で今季4号。試合後は地元大阪の友人らが祝勝会を開いてくれたが、お酒は控えめにして翌日の試合に備えた。17日には2戦連発となる5号弾。この6連勝中だけで、9安打7打点と完全復調した打撃に「何も考えてないからじゃないですかね」。本塁打を打ちまくった昨季、何度も口にした“らしい”言葉も復活した。本来の姿に戻った田上選手がチームを首位奪取まで導く。