8回表2死三塁、右中間に勝ち越しの適時三塁打を放つ松田選手

8回表1死一塁、右翼線に同点適時二塁打を放つ川崎選手

鬼門で、大逆転勝利だ！ホークスが松田宣浩選手の一打などで、首位攻防の大事な初戦で逆転勝利を飾った。中盤に3点をリードされたが同点に追いついた8回表に、値千金の勝ち越し適時三塁打。7回表にも貴重な15号ソロを放ち、6連敗中だった西武ドームで138日ぶりの白星。負け越せば自力優勝が消えるがけっぷちシリーズの初戦を執念でものにした。首位西武に1.5ゲーム差に迫った。

「抜けてくれ！」。松田選手が、心の中で叫んだ。同点に追いついた8回表。なおも2死三塁のチャンス。西武小野寺投手が投じた高め直球を振り抜いた打球は右中間へ飛んだ。右翼手高山選手が全速力で追い、ジャンプ。「抜けてくれ！」。松田選手の願いどおり、打球は高山選手の差し出したグラブのわずか上を通過した。値千金の勝ち越し適時三塁打－。三塁べース上で満面の笑みを浮かべた。

松田選手「（川崎）ムネさんが同点打を打ってくれた後だったので『ここしかない』と思って打席に入った」

取り返すためには、ここしかなかった。大事な首位攻防戦の初戦で“ミス”を犯していた。同点の4回裏。左翼の守備で、無死から西武上本選手が放った左中間への打球を追い背走キャッチを試み失敗。二塁打とされ、それをきっかけに甲藤啓介投手が致命的な3点を失った。「試合で慣れていくしかないけど、追い方がまずかった」と井出竜也外野守備走塁コーチ。本職は三塁だがチーム事情もあり、最近は左翼の守備についている。失策にこそならなかったが、重要な一戦でのまずい守備に大きな責任を感じていた。

だからこそ、バットですべてを取り返した。2点を追う7回には左中間へ15号ソロ。「9回が終わるまで、絶対にあきらめない気持ちがあった」。1点差に迫り、チームを鼓舞すると勝ち越しも自分で決めた。

師匠のためにも、絶対に負けられないと思っている。自主トレに帯同し師と仰ぐ松中信彦選手が、現在左手首痛で2軍調整中。「松中さんが一番苦しいと思う。戻ってこられるまでに、いい順位にいないと」。先月、夫人とともに松中選手の自宅に招かれた。広いリビングには優勝時の写真などが、所狭しと飾られていた。目を輝かせながらそれらを眺め「早くこんな家に住めるように頑張る」と夫人に約束した。勝負強い打撃で勝利に貢献し、1歩1歩その階段を上がっている。

松田選手の値千金の一打もあり、6連敗中だった西武ドームで138日ぶりの白星を飾った。それも首位攻防戦での逆転勝利。この日の試合前には王貞治会長の実母、登美（とみ）さん（享年108）が亡くなっていたが、8回に同点打を放った川崎宗則選手はこう話した。「そういう気持ちがみんなの中にあったと思う。会長のお母さんが勝たせてくれたのかもしれない」。負け越しなら自力優勝が消滅する瀬戸際に追い込まれても、チーム一丸の勝利で先勝、西武に1.5差と迫った。