1回裏1死満塁、左越えに先制の20号満塁本塁打を放つ多村選手

1回裏1死満塁、左越えに先制の満塁本塁打を放ち満面の笑みで生還する多村選手

多村仁志選手が自身2本目のグランドスラムで、首位獲りチャンスをもたらした。1回1死満塁で横浜時代の04年以来6年ぶりとなる満塁弾を左翼席へ。途中でベンチに退くなど、腰と右腕に痛みを抱えながら強行出場するスラッガーが、節目の20号アーチで大仕事だ。首位西武が敗れて、0.5ゲーム差と肉薄。25日にも鷹が再奪首だ。

多村選手が右上腕部と腰の痛みを覚えつつ、こんしんの一撃だ。1死満塁の1回猛攻。オリックス近藤投手の高めチェンジアップを打ちに出た。フォロースルーで右手が離れた。腰の右側に張りを抱え、右上腕部にも痛みを持つ代償だ。最後は左手だけで振り払うようにスイング。それでも、ライナー性の打球は左翼席に飛び込んだ。

多村選手「ちょっと詰まったんですが、うまく打てました」。

自身2度目のグランドスラム。一塁側ベンチ前でナインと雄たけびをあげながらハイタッチを交わした。横浜時代の04年4月21日以来の満塁弾で、節目20号にも到達した。

今季多村選手が口にする言葉がある。「優勝したい。休むわけにはいかない」。

高い身体能力を持ちながら、昨年までシーズン100試合以上の出場は3度だけ。ケガに泣き続けたスラッガーに精神的なタフさが備わってきた。腰痛に加え、右腕の痛みから、この日の試合前フリー打撃では満足にスイングできなかった。4回に3打席目を迎えたところでベンチへ退いた。だが、欠場の2文字は視界にない。試合後、主将小久保裕紀選手から「明日大丈夫か？」と問われると、「行けますよ」と即答した。

体調の異変に合わせ、打撃フォームを変えた。右腕と腰に痛みが走るため、体重移動を抑えたフォームに取り組んでいる。軸足の右足に重心を残し、左腕で払い打ちするフォームに変化を遂げている。満身創痍（まんしんそうい）の体で、チームが12勝を献上している天敵近藤投手に価値ある満塁弾。「マッチ、コク（小久保）さんとランナーが出るごとに気持ちが盛り上がってきました」。昨オフ、チームメートから胸に刻まれた言葉もある。小久保選手からは「多村がいるといないでは相手に与える恐怖感が違う」と言われた。信頼する仲間を、ひと振りでホームに導いた。

多村選手の1発で勢いづいたチームは、首位西武に0.5ゲーム差に迫った。秋山幸二監督は「最初の4点が効いた。立ち上がりを仕留めたね」と語った。25日にも再奪首だ。強行出場を続ける背番号6が、間違いなく逆転Vへのキーマンだ。