
山下選手(左)の打撃練習を見つめる王球団会長(中央)と小川2軍監督

フリー打撃で豪快なスイングを見せる山下選手
王貞治球団会長が7日、ドラフト1位山下斐紹選手を「放牧」する指導方針を打ち出した。現阪神の城島選手を獲得した際も2年間2軍でじっくり育て上げた。いきなり打撃フォーム改造などに着手することなく、城島流の放牧スタイルを大器山下に準備した。
王球団会長が山下選手育成の基本コンセプトに「放牧」を決定した。打撃練習の時間をわざわざ確認しようと、午前中にB組練習場に足を運んだときだ。
王球団会長「オレは最初からああだこうだと教え込んでいくのは賛成しないね。形にはめ込まない方がいいと思うよ。言葉はあれだけど、2年間放牧みたいなものなんだから。」
育成期間に2年を充て、当面の細かい指導は控える。かつてダイエーの正捕手に育て上げた1人の男の育成方針にダブっていた。
王球団会長「城島のときはとにかく試合(2軍戦)に出し続けていこうということでやったんだ。プロとしての体をつくっていくということで。」
現阪神の城島選手は当時の王監督に「練習でも、前の日より1cmでも1mmでも遠くに飛ばすんだ」と指導を受けた。小さくまとまらず、大きく育ってほしいという願いが、山下選手放牧プランに詰め込まれている。自身の新人時代を振り返る言葉にも思いが込められた。
王球団会長「プロに入ってくる選手は、みんな自信持って入ってきている。それを最初から(細かい指導を)言ってもね。オレはキャッチボールの球でも重く感じたよ。ジャイアント馬場さんの球がね。ブルペンでも周りの人の球が速くて、オレだけ遅いように感じたものだよ。そうしたら、すぐ投手をクビになったけど。」
異例プランを打ち出された山下選手も規格外のスイングを見せつけた。午後のフリー打撃。再び王球団会長が訪れ、初視察が実現した。山下選手は打撃投手の球をフルスイング。29スイングで9本の柵越えだ。
山下選手「(ドラフト2位)柳田さんに監督と会長が来たときはアピールしろと言われていたし、ロングティーの成果が出ました。」
放牧プランを決定した王球団会長だけに、打撃練習後に山下選手に近寄って声をかけることは控えた。
王球団会長「打球がフワッと上がるけれど、なかなか落ちてこない。見た目の切れや迫力より、いい打撃をしていた。手の使い方がやわらかい。ロングティーでも柵越えするらしいよ。」
タカの1番星は王球団会長の方針のもと、プロとしての歩みを加速していくはずだ。