
2回裏無死一、三塁、右越え3点本塁打を放ちゆっくりと歩き出す松中選手

2回裏無死一、三塁、先制の3点本塁打を放った松中選手を笑顔で出迎える小久保選手らナイン
レギュラー奪取へ、ド派手な1発だ!松中信彦選手が、オープン戦チーム第1号を放った。ヤクルト戦の2回に、ヤフードーム右翼席中段に突き刺す3ラン。大型補強で定位置を保証されていない主砲が、完全復活をアピール。2年ぶりの開幕スタメンをグイッと引き寄せた。
松中選手が今季にかける思いを、特大の1発で示した。2回無死一、三塁。ヤクルト館山投手が投じた5球目のチェンジアップが内角寄りの高めに浮くと、バットを振り抜いた。打球は右翼席中段へ。チーム今季1号の行方を確認すると、一塁方向へと3歩ほど歩き出しゆっくりとダイヤモンドを1周した。
「完璧に打てました」
自画自賛の1発で、衰え知らずのパワーを見せつけた。統一球の影響もあってか、この試合前まで6試合でチームは本塁打ゼロ。相手チームには3本のアーチが出ていたが、すべてスタンド最前列に飛び込んだものだった。飛距離が出にくいと言われる統一球を、物ともしないスイングは完全復活を十分の予感させた。
「ボールがひっついてくれた。押し込めた感触はあったけど、やっぱり(統一球)重い感じがした」
復活にかける思いと、激しすぎる競争に突き動かされている。2009年オフの右膝半月板手術の影響もあった昨季は、わずか11本塁打。衰えをささやく声も、耳に入った。さらにオフにはカブレラ選手、内川聖一選手らの大型補強。ポジションのかぶる選手の加入に、3冠王にまで輝いた男のプライドは傷ついた。
だが、立ち止まりはしなかった。「今季は若手と一緒の立場」と、復活のためにプライドは捨てた。レギュラーになってから初めてオープン戦の初戦に照準を合わせた。昨年12月には、走り込みを中心としたグアム1次自主トレを敢行。前倒しで体をつくりあげ、1月に再度グアムへ渡った2次自主トレではみっちりバットを振り込んだ。キャンプでも初日から好調な打撃を見せていた男のチーム第1号は、必然のことだった。
「何回も言うように今季は若手と同じ。シーズンでもないのに1本出たくらいで確信なんかない」
手に残る心地よい感触にも安堵(あんど)はない。オープン戦はここまで全試合スタメン出場を続けているが、この日は、カブレラ選手が2試合連続で"休養"。体調不良を訴えていたオーティズ選手も万全となり、開幕スタメンをかけた競争は本格化した。
「カブレラは自分で休めるけど自分はそんな立場じゃない。明後日(8日)からは出るだろうし、少ないチャンスをものにしないといけない」
ホークスの顔を張った男が、がむしゃらに2年ぶりの開幕スタメンを奪いにいく。