2024/08/06 (火)
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王貞治会長「30回の中で一番興奮しました」 福岡で初開催の世界少年野球大会、新たなステージへ

世界少年野球推進財団(WCBF)が主催する「第30回世界少年野球大会」が7月末から8月初旬にかけて福岡県内で行われました。14の国・地域から約90人の少年少女が参加。野球教室や国際交流試合、文化体験などで交流し、最終日は福岡ソフトバンクホークスの招待によりみずほPayPayドームで試合を観戦しました。WCBF理事長を務めるホークスの王貞治会長は、福岡での初めての大会を「開催できて本当に良かった」と振り返りました。

米国ロサンゼルスで1990年に開かれた第1回大会から34年。コロナ禍の影響で2020年から昨年までは大会自体を開催できなかったことも重なり、王会長は首を長くして福岡大会を待っていました。「これまでも(福岡での大会開催を)打診はしていたけど、施設の関係とかもあってね。それに大会側も区切りの回にやりたいという思いがあって、延び延びになっていました。長くかかった分だけ、大会も盛り上がったんじゃないかなと思います」と感慨深げな表情を見せました。

王会長にとって福岡は「第二の故郷」だといいます。巨人のユニホームしか着たことのなかった王会長が福岡にやって来たのは1995年。福岡ダイエーホークスの監督、福岡ソフトバンクホークスの監督、会長と立場を変えながら、30年目を迎えました。「もう30年、福岡にいるからね。東京に生まれて東京で育ってはいるけど、第二の故郷というと福岡しかない。福岡の皆さんもそう思ってくれていると思いますし、そういう点では福岡の皆さんへの恩返しになると思っています」と今大会の意義を強調しました。

この大会を立ち上げたのは日米のホームランキング、王会長とメジャー通算755本塁打のハンク・アーロンさん(2021年死去)です。1988年に巨人の監督を退任した後、王会長は野球を通じて得た自分の経験を子供たちに伝えていきたいと思案しました。その時、相談を持ちかけた相手がCM撮影などでも親交があったアーロンさんだったのです。「ハンクさんに話をしたら、いいじゃないか。協力するよと言ってもらってね。それで、ハンクさんと僕がやるんだったら『世界の』ということで、大げさな名前なんだけど、将来的に世界中の子どもたちを集められるような大会にしていこうということになりました」

野球発祥の地、米国で第1回大会を開催。施設の充実度など、王会長は日本とのスケールの違いを実感しながらも大会継続への思いを強くしました。しかし5年後、王会長は「もうユニホームを着るつもりはなかった」という中で、周囲に背中を押されてホークスの監督に就任します。自身の活動の幅は制限されても、大会は途切れることなく続きました。「多くの野球界の先輩たち、後輩たちにすごくお世話になってね。自分が自由に動けない、任せてやってもらうしかないような状況になっちゃったけど、やっぱり思いっていうのはある。多くの野球のOBにね、いろいろお世話になって、つなげていってもらって、30回までやってこれました」と感謝します。

忘れられないエピソードがあるそうです。ある年の大会で、王会長が見たのは米国とロシアから参加した少女が笑顔で話し込む姿でした。「みんな、言葉も通じないだろうに、今みたいに通訳の機械とかそういうのもなかった時代にね、ロシアとアメリカの女の子が本当に仲良くいろいろ話したり、一緒にご飯を食べたりしていたんですよ。子どもっていうのは特殊な能力を持っているんだね。すごいですよ」。団体競技の野球は助け合ったり、支え合ったりして、勝利を目指すもの。王会長は「団体スポーツというのは子どもたちにとっては人生そのもの。野球だから世界少年野球大会ができた」と強調しました。

2005年に球界参入した福岡ソフトバンクホークスのスローガンは「めざせ、世界一」です。孫正義オーナーが掲げていた高い志は、大会に「世界」の冠をつけた王会長にとっても勇気をもらえるものでした。「ソフトバンクホークスになって『めざせ世界一』って言われると、やっぱり、それくらいの気持ちでWCBFもやらないといけないんだなという思いになってね。そういう意味では孫オーナーにどんどん目標を大きくしてもらいました」。今年初参加のベトナムも含め、これまでに参加した国・地域は99、参加人数は約5900人。世界を舞台にした大会のスケールはますます大きくなっています。

王会長にとって念願だった福岡開催。今回の開会式には第1回大会に参加した卒業生も掛け付け、30回目を迎えたことを祝福しました。この先のさらなる発展に期待、注目が高まる中、王会長は将来の大会の姿をこんなふうに描きます。

「この大会に参加した子どもたちが、みんなで集まって運営してもらうのが一番いいと思っているんですよ。自分たちがやってみて、こうあるべきだとか、こうあってほしいと思ったことをやっていく。そうすると、大会がもっといい形になっていくと思うんです。参加した子どもたちが思うWCBFをつくっていく。いろんな人の力を借りなければいけませんが、運営に関してはそういうOB、OGに任せられるようにバトンタッチしたいと思っています」

今大会の最後の公式行事となったホークスの本拠地、みずほPayPayドームでの試合観戦。まるでこの日のために用意されていたかのような劇的なサヨナラ勝ちに、王会長は「最後の日に一番盛り上がってよかった。熱い思いが子供たちにも届いたと思うし、将来、ここ(ドーム)でプレーする人が出てくれればいいね」と目を細めました。たくさんのスポーツがある中で、野球を選んでもらいたい。野球には胸を熱くする何かがある。「彼らにはいいプレゼントができたと思います」という王会長は、子どもたちにも負けないうれしそうな顔でこう締めくくりました。

「子供たちだけがうれしかったんじゃないんですよ。われわれが一番うれしいんです。30回の中で一番興奮しました」

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