8勝目をあげた先発の杉内投手

杉内俊哉投手が西武の強力打線を6回4安打3失点に抑え、今季8勝目(1敗)を挙げた。2試合連続完投から中5日登板で自身の連勝を6に伸ばした。杉内投手は6月4試合に登板し、3勝0敗と月間MVP候補にも名乗り。一昨年のチームは交流戦明けのリーグ再開2戦目から5戦未勝利、昨年は7連敗。「鬼門」の第2戦を交流戦MVP左腕杉内投手の粘投と、10安打10得点と打線の爆発でものにした。

この日ばかりはマウンドでなくベンチでのんびり勝利の瞬間を待った。自慢の救援陣が7回から無失点リレーを決め、杉内投手の元に白星が届けられた。「良かった、良かった」。アイシングを終えた左腕はベンチ裏通路から涼しい顔で姿を現した。今季8勝目は6回4安打3失点、90球でゲットした。

相手はリーグ最多本塁打を誇る打線。「バットを振ってくる分、楽でもあり、怖いところもある」。それでも杉内投手は大胆、慎重の信条を貫いた。三振は毎回の8個。右打者の内角へのスライダーでクルクルとバットに空を切らせた。5回まで3ボールはゼロ。直球とカーブ、チェンジアップの組み合わせで打者のタイミングを外し、18アウトのうち内野ゴロで9アウト(併殺含む)を奪った。 3-0の4回2死一塁から4番中村選手に真ん中高めの直球をバックスクリーン左へ4試合ぶりの被弾。「あれは失投」と認めたが、猛省したのは6回の失点だ。佐藤選手に初の四球を出すと、2死二塁から中島選手にタイムリー二塁打を許した。「無駄な四球は失点につながりますね」。試合後、この話題にだけは顔をゆがめた。

1点差とこの場面でマウンドに来た高山郁夫投手コーチと話し合い、チームとして被弾していた中村選手を避け、平尾選手との勝負を確認。「平尾さんが当たってなかったので」。捕手田上秀則選手が立ち上がることはなかったが中村選手に対し今季2度目“敬遠"を選択。平尾選手を計算通りの三ゴロに打ち取り、グラブをポンとはたいたししぐさに勝利への執念がにじんだ。2試合連続完投勝利から中5日登板、そして7回以降を抑える救援陣「SBM」の存在もあって、首脳陣はこの回限りで杉内投手にお役御免を告げた。

交流戦を連覇したが、26日のリーグ再開初戦で10失点大敗。一昨年は再開2戦目から5戦未勝利(1分け4敗)、昨年も7連敗していたが、この鬼門を打ち砕いた。西武は秋山幸二監督らが現役時代に築いた80～90年代の黄金期ユニホームを着用したが、杉内投手の輝きを際立たせる衣装にすぎなかった。秋山監督は「うちの形で試合ができたな。杉内はあの1発だけだった」とエース左腕をたたえた。

5月3日ロッテ戦で始まった自身の連勝は6に伸びた。4試合に登板した6月は3勝0敗。交流戦に続いて月間MVPの可能性もあるが、杉内投手は「どうなんだろうね」とかわした。ただ5月12、13日を最後に1カ月以上、チームに連敗がないと話題を振られると、ニコッと笑った。再び貯金10。連敗しない強さが今はある。