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3回裏、本塁打の判定が覆って二塁打となり、走者に戻る松中選手とオーティズ選手 |
松中信彦選手が「幻のマングローブ弾」に泣いた。2-2の同点で迎えた3回1死一、二塁で放った打球は右翼席へ入ったようにも見え、1度は本塁打と判定されたが、協議の末に覆されて二塁打となった。秋山幸二監督も珍しく怒りをあらわにして抗議したが実らず、3ランのはずが1点の勝ち越しどまり…。試合は延長の末、5-6で1点差負けした。後味の悪い1敗となったが、4日からの首位日本ハム2連戦(函館)へ、仕切り直す。
幻と消えた。勝ち越し3ランも、マングローブ1000本も、白星までも。悲劇の主人公は松中選手だ。同点の3回1死一、二塁。オリックス金子投手の直球を振り切った。打球は低い弾道で右翼方向へ。スタンドへ入ったようにも見えたボールは、勢いよくグラウンドへ跳ね返った。一塁塁審の柿木園審判員が思わず? 右手を回し、主砲はダイヤモンドを1周。“文句なし”の11号…となるはずだった。
雲行きが変わったのは、オリックス大石監督の抗議があってから。審判団が協議を行い、フェンス最上部に当たったと確認されて二塁打となった。秋山監督はまゆをつり上げて詰め寄り、抗議は就任後最長の5分間に及んだが、もう覆らない。ベンチから呼び戻された松中選手は、首をかしげながら二塁へ向かった。
柿木園審判員 松中選手の打球を本塁打と(判断して右手を)回しましたが、協議の結果、フェンス(直撃)で、二、三塁で再開します。
場内にアナウンスされると、ブーイングがドームにこだました。フェンスには打球の跡が残っており、最終的な判定は正しかった。問題は“誤審”でプレーが止められたこと。インプレーなら一塁走者も生還できていた可能性があった。結局、続く小久保裕紀選手と多村仁志選手が凡退して勝ち越しは1点止まり。試合は1点差で敗れただけに痛かった。
地球も悲しんだに違いない。この日の試合前に松中選手は、本塁打1本につきマングローブの苗木1000本を植えるプロジェクトを発表。さっそくの1発となるはずだった。「ビデオで見たら入ってなかった。(審判も)人間だからミスはある。あの打球で(スタンドに)入るよう練習するだけ」。無念を胸に秘め、静かに帰りの車へ乗り込んだ。