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9回表1死、右前打を放ち一塁に走る代打松中選手 |
首位日本ハムとの直接対決に敗れ、自力Vが消滅した。7回以外毎回走者を出しながらタイムリーが出ず、得点は初回の1点のみ。残塁は10を数えた。今季2度目、後半戦では初の4試合未勝利。それでも右ひざ痛の松中信彦選手は最終回、今季代打で意地の初安打を放った。足を引きずりながら一塁ベースにたどり着いた姿こそチームのネバーギブアップ精神を象徴する。
追加点を奪えなかったという事実が、日本ハムのマジック点灯を許すはめになった。秋山幸二監督はいつも以上に口が重く、森脇浩司ヘッドコーチは報道陣の質問にうなずくだけで移動バスに乗り込んだ。「あと1本なのにな。もう1本出るとかそういうところなんだよ」。指揮官は2回以降、タイムリーの出なかった攻撃をぼやき気味に振り返った。
ロッテ3連戦で1勝もできなかったホークスは午前に東京から札幌へ空路移動して、ゲームに臨んだ。移動疲れもあってか、後半戦初の4試合連続の勝ち星なし。重い空気は秋風の吹き始めた北の大地でも変わらなかった。首位日本ハムとのゲーム差は5.5と広がり、眼下の3位楽天には4.5まで迫られた。
暗い材料が並ぶ中、ベテラン松中選手がその言動で不屈の姿勢を示した。右ひざ痛で4試合欠場し、前夜27日に代打で「復活」したばかり。「首脳陣がだいぶ気を使ってくれて…」と多くを語らないが、激痛が癒えないまま、この日は首脳陣に先発出場を直訴したもよう。チームの窮状を打破したい、勝ちたい一心だった。
2試合連続で代打の切り札として、9回1死走者なしで登場。痛みで外角球に踏み込めず、スイングも満足にできないが、武田久投手が唯一投げた5球目の内角スライダーを左足だけでバランスを取ってとらえた。どん詰まりの右前打。足を引きずり表情を崩しながら、一塁ベースにたどり着いた。「ランナーがいる時に打ちたかった?そうですね」。左ひじにも痛みを抱え、満身創痍(そうい)の男が不格好ながらに仲間へ伝えたものは小さくない。
自力Vは消えても、逆転Vの可能性まで消えたわけではない。相手のマジック点灯にも松中選手は「それは出たけれど、まだあと2つ(日本ハムとの2試合)を取ればいい」と前を向いた。チーム最多20発を数える主砲が重い敗戦の中、あきらめない姿を敵味方に示した。