 |
9回裏2死二塁、サヨナラの左前打を放ちナインと歓喜の中、松中選手と抱き合う小久保選手 |
逆転Vへ、主将のバットが望みをつないだ。ホークスが今季8度目となるサヨナラ勝ちを決めた。2点を追う9回裏に打線がつながり同点とすると、最後はキャプテン小久保裕紀選手のサヨナラ安打で歓喜のフィナーレ。3連勝で首位日本ハムと4.5ゲーム差をキープ。CS(クライマックスシリーズ)マジックも再点灯させ、秋山ホークスが再び勢いに乗った。
誰もが夢見るフィナーレへ、この男なら導いてくれる。秋山ホークス初代主将の小久保選手だ。9回裏。同点に追いつき、なおも2死二塁。歓喜の2文字を、ひと振りで決めた。初球スライダーをバットに乗せた。左翼線へ。自身にとっても02年9月8日のサヨナラアーチ以来7年ぶりとなるサヨナラ打。一塁ベースを回ったところで、ナインの祝福を体いっぱい浴びた。
小久保選手「みんなのあきらめない気持ちが最後の攻撃に出た。自分で決めてやろうと思った。」
チームの一体感が背中を押した。2点を追って最終回を迎えていた。先頭打者の明石健志選手が中前安打で出塁。不振の川崎宗則選手が右翼線二塁打で1点差に迫ると、前打者オーティズ選手が同点左犠飛。自らの後には右ひざ痛をおして強行出場を続ける松中信彦選手が控えていた。
小久保選手「明石のあきらめないヒットが大きかった。ノブヒコ(松中)も自分がやれるだけのことをやっている。ノブヒコが後にいるから勝負やと思って初球から行った。」
小さな積み重ねが大きな勝利を呼ぶことは体をもって知っている。10年近く変わらぬ習慣がある。昼食は玄米中心。疲労回復を目的にビタミンやミネラル豊富な食生活。今季全試合出場はチームでただ1人。右足太もも裏や腰など各所に痛みは抱えているが、弱音は一切吐かない。その姿勢には、秋山幸二監督も「ここまできたら誰もが痛みをもって出場しているもんだ。コク(小久保)もそうだが、それでも出場して、結果を残すのがプロだ」と話したことがある。チームは今季過去7度のサヨナラ勝ちを飾っているが、そのうち2度は小久保選手が先頭打者で出塁している。だからこそ、小久保選手は「(サヨナラ打は)勢いや、勢い。打った球?スライダーかな。直球狙いだったけどバットにひっかかってくれた。みんながつないだおかげ」とナインに感謝した。
反撃のノロシを挙げたのも小久保選手だった。4回裏。岸投手から追撃の17号ソロ。通算383号。尊敬する巨人原監督を抜いて歴代17位となった。しかも、チームが3年越しで6連敗中だった天敵右腕からの価値ある1発だった。
小久保選手は言った。「目指すところは1つ。チャレンジャー、強気、積極的を合い言葉にやっていく」。首位日本ハムも勝ち、4.5ゲーム差は変わらないが、3連勝で追撃ムードは高まった。秋山監督も手応え十分だ。「久しぶりに気持ちいい勝ち方だ。嫌な展開だったが、みんなが最終回、よく集中していた。明日につながる」。CS(クライマックスシリーズ)出場へのマジック20も再点灯。指揮官が言葉にした「明日」の先には、逆転優勝が待っているかもしれない。