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10勝目を挙げたホールトン投手と明石選手はヒーローインタビューを終えガッツポーズ |
この日ばかりは西武打線も、この男が「鬼」に見えたかもしれない。ホークスの助っ人右腕ホールトン投手が、外国人投手として球団44年ぶりの2ケタ勝利を達成した。昨季途中に先発転向して以降、未勝利だった西武を相手に、7回9安打3失点。「赤鬼」の異名をとった南海スタンカ(65年の14勝)以来となる助っ人10勝目を、先発初の獅子狩りで手に入れ「(2ケタ勝利は)キャンプから個人的に一つの目標にしていたのでうれしい」と笑顔をみせた。
安定感が最大の武器だ。3回に栗山選手の三塁打から1点を先制されたが最少失点で阻止。6回には中島選手にソロを浴びるなど9安打されても大崩れしなかった。「多少は点を失っても大丈夫だと気楽に投げられた」と大量点に背に試合展開を考えながら試合をつくった。開幕からここまでチームで唯一ローテーションを守り抜き、防御率は2.91。スタンカが64年に記録した外国人最高防御率の2.40に及ばないが、堂々、右のエースだ。
日本球界2年目は環境が変わった。05年にドジャースの先発ローテの一角として活躍した実力を発揮できるのは、鬼に金棒ではないが、愛する家族がいるからだ。「(今季は日本に)奥さんがいるし、奥さんが作っているものを食べているだけだよ」と幸せいっぱいの笑み。米国での仕事や出産で、昨季は1週間程度しか日本に滞在できなかった夫人と愛娘との生活が、最大の支えだ。愛する家族がいつでも球場に来やすいように車は自宅に置き、本人は自転車で球場に通う。家族のためなら苦にならない。
「(ホールトンとは)同じ年齢やし仲もいい」と話す女房役の田上秀則選手も21号2ランを放つなど、味方も大量援護で快挙を祝った。スタンカは64年にシーズン24勝、日本シリーズでも3完封で南海の日本一に貢献した。もちろん、「赤鬼スタンカ」をホールトン投手自身は知らないが、チームを優勝に導く決意は同じに違いない。