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7回表1死二、三塁、逆転2点適時打を放つ多村選手 |
多村仁志選手が執念の3打点だ。4回に適時二塁打でチームの初得点を生むと、7回には逆転の2点適時打を放った。勝利への思いを結果で示した。
すべての思いを詰め込んだバットは、ボール球さえ逃さなかった。3-4の7回1死二、三塁、カウント2-2からロッテ伊藤投手の5球目。外角のスライダーに上体を泳がされながら、必死で両腕を伸ばした。届いた。執念を乗せた打球は左前でバウンド。走者2人が生還して、ついに逆転を成功させた。送球間に二塁へ達し、満面の笑みを浮かべた。
多村選手「かなり気持ちが盛り上がっていた。チーム一丸で戦っているという雰囲気が最高。」
周囲の期待をひしひしと感じていた。無死一、二塁から松中信彦選手の代打吉川元浩選手が犠打を決め、迎えた打席だった。「吉川が代打でバントという難しいところをきっちり決めてくれた。(相手とは)目的が違うから」。身が奮い立たないわけがなかった。
追撃の口火を切ったのもまた、背番号6のバットだった。毎回のように得点圏に走者を置きながらロッテ先発渡辺俊投手を攻めあぐね、0-3の劣勢で迎えた4回だった。小久保裕紀選手と松中選手の連打で無死一、三塁のチャンスができた。高めに浮いた直球を迷わず振り抜いた。矢のように伸びた打球は左中間フェンスを直撃。三塁走者小久保選手が生還して1点をもぎ取った。
たとえ本塁打を捨ててでも、チーム打撃に徹している。秘めたる思いがある。自身の通算150本塁打まであと8本に迫っているが「今年はもういい。来年考えます」と明かしている。頭の中に描いている目標は“未体験”のリーグ優勝だけ。横浜時代にはチームが日本一に輝いた98年を右肩のリハビリで棒に振った。今年こそは貢献したい。「気持ちは毎日、込めているよ」。04年に40本塁打を放ったスラッガーは今、勝利だけを見据えている。みずからが引き寄せた大きな1勝で、夢は現実へと、また1歩近付いた。