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5回表1死一塁、多村選手は中越えに2点本塁打を放ち生還、ナインと笑顔でハイタッチ |
逆転Vへ、引き離されない。秋山ホークスが首位日本ハムとの2.5ゲーム差をきっちりキープだ。5試合ぶりにスタメン復帰した多村仁志選手が1発を含む3安打4打点と大爆発。多村選手を5番に据えた打線組み替えも当たり、ホークスが勝負の9連戦を白星スタート。自力優勝復活はお預けも、右手首を骨折していた松田宣浩選手も2カ月ぶりの戦列復帰と、秋山ホークスに追い風が吹いてきた。
打った瞬間は痛みなど忘れていただろう。多村選手が言った。「細かい技術うんぬんじゃない。勝ちたい気持ちで一つで打ちにいっているのが結果につながっている」。右肩痛を抱えながら5試合ぶりにスタメンへ帰ってきたスラッガーが、ど派手な復帰弾を飾った。5回だ。1死一塁。高めに抜けた変化球を仕留めた打球は、バックスクリーンへ。16号2ラン。淡々とベースを1周した多村選手の表情は、ベンチでナインの祝福を受けたとき、ようやく和らいだ。
先制点もたたき出していた。初回2死一、二塁で左中間に2点二塁打。「2点目は(一塁走者だった)小久保さんの激走のおかげ」。ホームに走り込んだ主将に感謝の言葉を並べたが、低めのボールゾーンに沈む変化球をとらえた技ありの一打だった。
経験したことのない「優勝」への思いが、多村選手を突き動かす。まだ、全力でスローイングはできない。福岡での試合時には、ナイター後でも宿舎のホテルで2時間近く治療につとめる。そんな傷だらけの男は前日14日、横浜の自宅で家族水入らずの時間を過ごし、この日を迎えていた。夫人のおなかには、8カ月になる第3子の命が宿っている。「横浜に帰ってパワーをもらってきました。(夫人は)だいぶおなかが大きくなっていました。そのパワーももらってきました」。優勝は新たな家族への何よりのプレゼントになる。今季最多の4打点、7月9日以来の猛打賞で大きな勝利を呼び込んだ。
秋山幸二監督の打線改造も当たった。8月18日以来、3番松中信彦選手、4番小久保裕紀選手、5番多村選手のクリーンアップを組んだ。9連戦の初戦の先制点は、この3者連続出塁で奪ってみせた。7番に下げたオーティズ選手は4回の追加点の起点となった。前夜、持病の腰痛のためハリ治療を受けた指揮官だが、勝負どころでカンはさえまくった。
首位日本ハムと2,5ゲーム差は変わらない。だが、逆転優勝に不可欠なピースが、一つ、また一つとそろい始めた。多村選手の先発復帰に加え、7月中旬に右手首を骨折した松田選手が2カ月ぶりの戦列復帰で、いきなりの左前タイムリーなど、打線は17安打12得点。「打つ方はだいぶいいんじゃないか」と秋山監督。交流戦V戦士はそろった。あとは、一気に日本ハムをつかまえるだけだ。