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6回裏、3番手で中継ぎ登板して2安打無失点に抑えた和田投手 |
和田毅投手が再生へ一歩を踏み出した。5点ビハインドの6回裏に、自身5年ぶりとなる救援登板。1回を投げ無失点で切り抜け、2試合連続3被弾KOの悪夢からの復活をたどり始めた。中継ぎ登板を経ながら先発復帰させる「秋山流再生術」で、背番号21が完全復調を目指す。西武に完敗を喫して3連敗で沈むチームに一筋の光明が差し込んだ。
5年ぶりに歩んだ道で、しっかりと和田投手が復活への足跡を残した。敗戦ムードが漂い始めた6回裏。西武ドームが驚きの声に包まれた。3番手投手にコールされたのは和田投手だ。ブルペンから、小走りでマウンドに向かうと、無心で腕を振った。
和田投手「(5年ぶりの救援登板も)違和感はなかった。準備してましたから。今はどんどん投げて、打者との感覚を取り戻すのが大事なんです。」
04年5月7日以来の救援マウンドは15球だった。石井義選手に二塁内野安打、GG佐藤選手には中前安打。連打を浴びたが会心の打球ではなかった。無死一、二塁のピンチで、主将小久保裕紀選手が絶妙のバント処理の併殺プレー。最後は後藤選手を外角高めの直球で空振り三振。捕手の内角要求とは逆球だったが、球のキレが上回った。「三振は振ってくれたという感じ。運がよかった」(和田投手)。本人はそう振り返ったが、リリースポイントの見にくさと球のキレで勝負するサウスポーにとっては、何よりの復調兆しだ。
悪夢は、もう繰り返さない。左ひじ炎症から復帰後、2試合連続で3被弾KO。晴れない思いを振り切るかのようにこの日、試合中に2度ブルペンで肩を作り上げた。悔しさがこの男の糧にもなる。5年前の救援登板後には先発6連勝を飾った。今季はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)代表落選の屈辱を胸に開幕投手を務め、秋山幸二監督に指揮官初勝利を贈った。「投げて、投げて、野手の信頼を回復するだけです」。和田投手が言葉に力を込めた。
秋山監督ならではの再生術でもある。今季、高橋秀聡投手や大場翔太投手、大隣憲司投手ら先発で結果が出なかった投手をベンチ入りさせ、再び先発マウンドに送り込んできた。「和田は球自体はいいものを投げている。あとは打者との感覚だけ」と秋山監督。前日もベンチ入りさせたが、先発翌日とあって和田投手が肩を作ることはなかった。実質中継ぎ待機初日から、大ナタをふるった格好だ。
今後も和田投手は中継ぎ調整を続けるが、復調した時点で、先発復帰が確実。首脳陣もクライマックスシリーズ先発要員として計算している。西武に完敗し、首位日本ハムとは4.5ゲーム差。ミラクルと言える逆転V、そしてCS(クライマックスシリーズ)制覇には不可欠な左腕。暗く沈んだ一塁側ベンチだが、収穫は確かにあった。