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6回表2死二塁、2点本塁打を放った多村選手を拍手して迎える秋山監督 |
ホークスが天敵をようやく倒した。3年越しで6連敗中で、今季も3敗している西武岸投手を相手に打線が爆発。6回で5点を奪うKO劇で、連敗も3で止めた。首位日本ハムと4.5ゲーム差をキープする大きな白星で今季70勝に到達。秋山幸二監督にとっては、前身を含めて球団1年目の指揮官では初となる大台突入の記念星にもなった。4日ぶりのハイタッチは格別だった。憎き右腕を踏み台にして連敗を脱出した。しかも、逆転優勝に望みをつなぐ白星。秋山監督の声が弾むのも無理はない。「あ~、よかったね~」。西武ドーム名物の108段の階段を上り終えると、笑顔で話し出した。「(息切れするポーズしながら)ハアハアなるよ。(74歳の)ノムさんは、いつもどうしてるの?この階段。俺も足が張っちゃったよ」。天敵攻略に笑顔もはじけた。
指揮官の思いにナインが応えた。完封負けで3連敗を喫した前夜、秋山監督は「集中力がない」と評した。その言葉を背に、選手は07年9月21日の対戦から3年越しで6連敗を喫する岸投手相手に、ひるまなかった。まずは4回のオーティズ選手。3回の攻防で自軍が満塁の好機を生かせず、西武には後藤選手の1発で先制を許していた。嫌な流れを断ち切る同点の18号ソロだ。5回に勝ち越すと6回には多村仁志選手の17号2ランなどで3点を加点。苦手右腕をKOしてみせた。
2人の1発が、集中力の高さの証明だ。オーティズ選手は初回にカウント1-3からのカーブに対し、タイミングがまったく合わない空振りをみせていた。価値ある1発は1-2から、そのカーブを仕留めた。カウントを取るために必ず同じ球が来ると狙った。「うまくタイミングをとってバットを振り切ることができた」。
多村選手もリベンジを期していた。こちらは4回の打席で右飛に打ち取られた直球を待った。左翼席へライナーで飛び込む強烈な一打。今季右肩痛に悩まされた男の口からは「もう痛いところもない。残り試合、全勝するつもりでやる」と復調宣言まで飛び出した。
首位日本ハムが勝ったため、4.5ゲーム差は変わらない。だが、チームは70勝到達。秋山監督にとっては忘れられない1日になっただろう。前身を含めた球団1年目の指揮官では、70年南海野村監督の69勝を上回り、最高成績。しかも現役時代、13年間ユニホームを着た西武に今季勝ち越しを決める12勝目(9敗2分)をマークする記念星だ。
秋山監督の理想は「監督が何もしなくても勝つ野球」。前日18日に今後の戦いを見据え主砲松中信彦選手を強制休養させ、この日も攝津正投手を抑えで起用するなど、まだ理想に掲げる野球とは遠い。それでも、逆転Vには望みを残している。「今日は打線がいい形でつながった。明日につなげたい」。狙うのは70勝じゃなく、優勝の2文字だ。