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9回表2死、岡田選手を11個目の三振で仕留めた杉内投手 |
笑顔なき金字塔だ。杉内俊哉投手が本拠地最終戦のオリックス戦で今季8度目の2ケタとなる11奪三振を記録し、奪三振をリーグ最多204に伸ばした。ライバルの西武涌井投手を5個リードした。球団では58~60年杉浦投手以来、3人目となる2年連続200奪三振。勝率との投手部門「2冠」となったが、9回完投むなしくチームは4連敗となった。
打線の反撃を信じて9回を投げきった左腕は秋山幸二監督に続いて、うつむきながらベンチ裏に消えた。「負ければ意味がない」。杉内投手の口ぐせがその背中に書いてあるようだった。
クライマックスシリーズ地元開催に希望をつなぐマウンドだった。1、2回に野手の失策絡みで1点ずつを失った。「初回に1失点すると7回まで好投できる」。長年の経験則で序盤のビハインドは吉兆と決めている。マウンド上で「リリースの瞬間までは100%脱力」という理想を実行するための自己暗示。3回以降はそれを物語る奪三振ショーとゼロ行進だった。
6回に3アウトをすべて空振り三振で決め、6奪三振。西武涌井投手の199に肩を並べると、残る3イニングで5三振を加え、リーグ最多の204。11奪三振で2年連続奪三振王に躍り出た。ホークスでは58~60年杉浦投手以来3人目となる2年連続の200奪三振だ。9月下旬の手術以来、初観戦となった王貞治会長は約半世紀ぶりの球団記録に「今の時代の方が難しいよ。(打者が)ボールに当てる技術が上がっているからね」とうなった。2ケタは今季8度目、通算35度目はパ・リーグ現役最多の「ドクターK」が底力を見せつけた。
杉内投手の「勝ちパターン」もこの日ばかりは打線の反撃がなく、4連敗。今季最終先発で15勝5敗となり、最多勝は16勝の涌井投手が優位になった。それでも日本ハム・ダルビッシュ投手と並ぶ勝率7割5分と合わせ「2冠」とした。秋山監督は「良かったんだけどな。1点、1点もエラー絡みだからな」と左腕の心中を思いやった。試合後は記者の問いかけにほぼ答えず、笑顔なき、金字塔となった。