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15奪三振で完投勝利を飾った和田投手はファンと笑顔でハイタッチ |
和田毅投手が圧巻の奪三振ショーだ。好調ロッテ打線から自己最多記録を塗り替える15個の三振を奪い、無四球で1失点完投勝ち。チーム15試合目で完投一番乗りとなり、登板過多の救援陣も救った。アテネ五輪でのチームメートで7日未明に亡くなった巨人木村拓也内野守備走塁コーチ(享年37)にささげる、手向けの白星でもあった。
和田投手がマウンドで初めての感覚に包まれていた。「不思議な感覚でした。プロでは、これまでなかった感覚。まだ、半信半疑ですが」。それは、まるで東京6大学で476Kの奪三振記録を樹立したときのように、1人別次元だった。8回表、3者連続三振で自己タイの14Kに到達。バックスクリーンを見ると「14K」の文字が映し出されていた。9回表。先頭の南をスライダーで見逃し三振。マウンドでクルリと回転し、小さくガッツポーズをつくった。15K。新たな境地に踏み込んだ瞬間だった。
あの人が背中を押してくれたかもしれない。前日7日、巨人木村拓コーチが亡くなった。04年アテネ五輪でのチームメート。「人のことを気遣える方だったし、チームのことを誰よりも思っていた」。献身的な姿に感動を覚えた。毎年、年賀状をやりとりした。球場で会えば必ず「元気か?」と声をかけてくれた。
和田投手「恥ずかしい投球はできないなと思っていました。自分の投球を見てくれていたと思います。」
「他人ごととは思えないんですよ」。親族も脳の病に倒れた経験があるだけに木村さんの容体を1日1日気にかけていた。そして、自身も…。左ひじの故障に苦しんだ昨年、ある症状に襲われていた。原因不明の頭痛。経験したことない後頭部の激しい痛みだった。眠れない日が続いた。はしを持つのさえ、ままならなかった。病院を訪ね歩き、脳のMRI検査を受け、ストレスなどが原因のウイルス性の頭痛と判明。投薬治療で回復させていた。
支えてくれた人にも感謝の思いを込め、白星を届けた。宮城遠征から福岡に帰ってきた今月4日。1日遅れで夫人の誕生日を祝った。懸命にサポートしてくれた夫人、そして福岡のファンへ、今季初の本拠地白星で応えてみせた。
2年ぶり6度目の無四球完投勝利。15試合目で先発投手陣は完投一番乗り。登板過多の救援陣に貴重な休日を与えた。2回以降は二塁も踏ませず、散発4安打でチームに貯金1をもたらした。
「今日は1人で投げると決めていた。まだ、何球でも投げられた」。129球での勝利。15Kを奪っても、余力は十分にあった。