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9回裏2死一、二塁、サヨナラ左前適時打を放ちVサインで駆け出す松田選手 |
「マー君に勝てない病」にサヨナラだ!松田宣浩内野手が劇的なサヨナラ安打を放った。東北楽天戦の9回裏。2死一、二塁で、楽天先発田中将大投手から左前打。ヤフードームでは2007年から10試合対戦し、黒星をつけたことがなかった天敵マー君をついに撃破。今季初のサヨナラ勝利で、貯金を2に戻した。
松田選手が決めた。0-0で迎えた9回裏2死一、二塁。延長戦もちらつく局面で、松田選手だけは神経を研ぎ澄ませていた。初球は空振り。2球目。田中投手がこの日投じた121球目が、甘く入った。迷わず振り抜いた打球は大歓声の中、左中間へ。息詰まる投手戦を、自身プロ初となるサヨナラ打で決着させた。
松田選手「 (前打席の)多村さんが歩かされたので、絶対打ってやろうと思った。両投手ともいい投球をして、いい試合で勝つことができてよかった。」
ついに撃破した。田中投手とは新人だった2007年から、ヤフードームで10度対戦し黒星をつけたことがなかった。この日も8回まで内野安打2本を含む散発4安打。9回裏も相手ミスから無死三塁としたが、終盤でも151キロの直球を投げ込む右腕の前に小久保裕紀選手が三振。続く明石健志選手がセーフティースクイズを試みたが、最悪の失敗。「(スクイズは)こっちのミスだったけど、マッチがよう打ってくれた」と秋山幸二監督。全員が天敵の気迫に飲み込まれかけていたところで、大仕事をやってのけた。
大ヒーローのお立ち台で意気込みを問われて「滋賀県出身なので琵琶湖まで飛ばします!」とすっとんきょうに笑わせた。チーム内だけでなく、ファンにも天然ボケのキャラで親しまれる。しかしこと野球になると一途なまでに真剣で、鋭い男になる。記憶力と探求心は群を抜き、過去の打席のほとんどを頭にインプットしているほどだ。
特に理想的な打撃ができた時は、何打席目の何球目かまで詳細を覚えている。地元放送局などに頼み込みその映像を入手。自宅の居間にたっぷりたまったDVDを繰り返し目に焼き付け、次回対戦までイメージを膨らませる。
実は田中投手とは2008年に5試合対戦して、毎試合安打を放っていた。この日の最後に試合を決めたひと振りは、直前の1球目に空振りした変化球と同じ球種だった。「積極的に振りました」。努力や執念に裏打ちされた、決して偶然ではない一打が、チームに劇的勝利をもたらした。