3回裏無死満塁、左越えに満塁本塁打を放ち、ナインと笑顔でハイタッチする小久保選手

3回裏無死満塁、左越えに満塁本塁打を放つ小久保選手

小久保裕紀選手が、3年ぶりのグランドスラムだ。3回、楽天藤原投手から左翼席へ5号満塁弾をたたき込んだ。満塁本塁打は通算13本目で、歴代4位タイに浮上。王貞治球団会長(69)の持つ15本の最多記録を射程にとらえた。主将の豪快な一打で勢いに乗った打線は16安打を浴びせ今季最多13得点の猛攻で、貯金も今季最多の4。ゴールデンウイークならぬ貯金週間へ突入だ。

38歳にして、小久保選手が自らも驚くパワーを秘めていた。3回裏、無死満塁。フルカウントから楽天藤原投手の内角直球を打った。「詰まったのでフェンスぐらいかなと思ってましたが、入ってくれました」。グッと左足を踏み込み、極限まで左肩を開かない。バットの軌道がV字を描くようにフィニッシュは高い。ホームラン打者として、無意識のうちに、詰まりながらボールを押し込んでいた。今季5号、通算389本塁打。小久保選手らしい豪快スイングから、通算13本目のグランドスラムは生まれた。

打率3割1厘。打点26。契約最終年のプロ17年目も通過点となろうとしている。07年6月3日以来、3年ぶりに放った満塁弾で、歴代4位タイにランクアップ。「王会長の記録に追いつけるように頑張ります。あと2本ですかね」。王会長が持つ15本の満塁本塁打記録も射程圏に入ってきた。4月まで最低5本塁打としていた自身のノルマもクリア。相手が左投手とあって内角に入ってくる直球を引っ張り込むことを想定していた分析力とパワーを兼ね備えたバットの勢いは衰え知らずだ。

週4日の筋力トレ、試合後の2時間近くのマッサージ。ナイター時は深夜1時半に眠りにつくほど体のケアには気を使うが、気持ちの張りもある。巨人時代に同僚だった仁志敏久内野手(38=ランカスター)が、今年米独立リーグに挑戦。「メールが来とったよ。楽しい、楽しいって」。同年代の男の奮起は1つの刺激。ただ、視界は野球だけにとどまらない。「サッカーでキング・カズ(横浜FCの三浦知良、43歳)が一線でやっている。サッカーは心肺系のスポーツ。なのに、年上の選手があれだけやれている」。40歳を前にしても、老け込む年ではない。この日も1回に四球で出塁した後、2度も二盗を試みた。5回の守備では一、二塁間への打球に飛びついた。走攻守。体いっぱいで野球を表現しているようだ。

細かな配慮も豪打の裏にある。開幕直後、910～900gのバットを手にしていた。だが、現在は900～890gのもの。使っているのは手首に負担がかかりやすいと言われる、グリップの縁が丸みを帯びているタイプ。左手首の負傷歴がある小久保選手にしてみれば、疲労軽減が大きな課題。わずか10gの差だが、フルシーズン戦い抜くことを計算しての決断だ。

小久保選手のバットにつられるように打線は今季最多の13得点と爆発。貯金も今季最多の4。頼もしい主将が、ゴールデンウイークを貯金週間にしてみせる。