 |
5回裏無死、左中間越えソロ本塁打を放ち笑顔で和田投手らナインとハイタッチする山崎選手 |
 |
5回裏無死、山崎選手は左越えに2号ソロ本塁打を放つ |
打ち出の小づちならぬ、勝利を呼ぶバットだ。山崎勝己選手が、値千金の2号ソロを放った。シーズン2本塁打はプロ10年目で初めてだが侮るなかれ。山崎選手がヒットを記録した試合は、今季17勝2敗。リードでも先発和田毅投手の好投を引き出す活躍。攻守で存在をアピールだ。
その瞬間、一塁側ベンチがドッと沸いた。5回裏。先頭打者の山崎選手が左中間スタンドへ、貴重な追加点となる2号ソロだ。驚きの表情を浮かべながら秋山幸二監督が出迎えた。「勝己があそこで、オイっていうのが効いたね」。ベンチがお祭り騒ぎになるのも、無理はない。昨年まで1軍出場298試合(555打数)で1本塁打だった山崎選手が、好投していた中日チェン投手の直球を見事に打ち砕いたのだ。
ただ、今年の山崎選手は怖さがある。山崎選手が安打を放てば、これで17勝2敗。まさに、勝利を呼ぶバットなのだ。もちろん、恐怖のデータには裏付けがある。この日の狙いは、試合前のミーティングでスコアラー陣から渡されたデータをもとに、直球1本。1打席目は初球セーフティーバントを試み、打てなかった(見逃し)。仕切り直しの2打席目。初球フルスイング。「なかなか打撃は読み通りにいかないんですよね」と言うが、高めの球に力負けせず、最深部へと放り込んでみせた。
努力が実り始めている。普段の練習で気をつけているのは「(バットの)ヘッドが寝るクセがあるので、それを直すことをやっている」。構えのとき、背中を反らすような動きも、その一環。もっとも、“本業”のリードでも怠らない。交流戦開幕カードだった今月12、13日の中日2連戦では、先発マスクが田上秀則選手だったため、守備出場は2イニングだけだった。だが、データを洗い直し、先発和田投手の好投を引き出すなど中日打線に連打を許さなかった。
「捕手としてチームの勝利が一番うれしい」。盗塁阻止率は3割9分だが、盗塁刺16度はリーグトップ。この日3回表に荒木選手の二盗を防ぎ、ピンチを未然に防いだ。「それが武器なので」。派手さはないが、勝利を呼ぶ秘訣(ひけつ)を、山崎選手は心得ている。