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ホークス3番手で登板し勝利投手となった甲藤投手 |
勝利を呼ぶ男だ!甲藤啓介投手が、大逆転勝利を引き寄せる好投でプロ2勝目を挙げた。2点ビハインドの4回裏に3番手として登板。3回までに9点を奪っていたロッテ打線を、2イニング連続で3者凡退に抑えた。好投でリズムに乗った味方打線は最大5点差を逆転。開幕からの好投で勝利の方程式に食い込み、新方程式「SBM48」を確立させた5年目右腕が、チームのVを予感させる大きな1勝に貢献した。
やるべきことはわかっていた。負けていようが関係ない。チームに勝ちをもたらす-。それが、勝利の方程式。そう呼ばれる立場にいる以上、準備はできていた。
「ピッチャー、甲藤」。2点ビハインドの4回裏。アイドルグループAKB48をもじって命名されたホークスの救援陣「SBM48」の一角、甲藤投手の名前がコールされた。4回表に3点を返し、2点差に迫っていた場面。気合の入った表情でマウンドに登った。「どこでもいく、という気持ちで準備していたと思う」と田之上慶三郎投手コーチ。投じる球を見れば一目瞭然(りょうぜん)だった。
先頭のサブロー選手を初球142キロ直球で遊ゴロに仕留めた。続く竹原選手は、内角を強気にえぐるシュートで二ゴロ。里崎選手にはスライダーを4球続けて三振を奪った。両チームで初の3者凡退。序盤で荒れた試合の空気を、ガラリと変えた。
味方が同点とした直後の5回裏マウンドには、鬼のような表情で上がった。3者凡退。6回に味方が勝ち越し、プロ2勝目を手にした。「ぼくの事はいいですから。他の人に聞いてください」。シャイな性格もある。だが自分のした仕事の大きさを理解できていないぐらい、無我夢中だ。
はい上がって、ここまで来た。昨季までの4年間で登板は16試合で、開幕も2軍スタート。今季初登板もいわゆる敗戦処理。近大の後輩、巽真悟投手が先発した3月31日の西武戦だった。その前日、緊張する後輩を「おれがケツをふいてやるから、思い切り投げてこい」と激励した。結局、巽は4回途中6失点でKO、自身は2番手としてマウンドに登った。
その後も敗戦処理は続いた。だがどんな場面で登板しても、全力で投げ続けた。「いけるとこまで全力でいかな、しゃーないでしょ」。口癖のようにそう話した。信頼を得るためだった。この日で46試合目の登板防御率は2.61。いつのまにか、信頼は絶大なものとなっていた。
甲藤投手がつくった流れに乗り「SBM48」4投手は、6イニングを完全投球。秋山幸二監督は「とにかくリリーフ陣が頑張ってくれた」と、今季最速4回からの投入に応えてくれた勝利の方程式をたたえた。甲藤投手が引っ張る「SBM48」がいる以上、Vへの進路は揺らがない。