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1回表2死二塁、中前に先制適時打を放つ小久保選手 |
ホークスが悲願Vに向け、主将のバットで首位固めだ。小久保裕紀選手が、チーム全得点をたたき出すなど3安打2打点の活躍。2位西武、3位ロッテともに敗れ、チームは大混戦のパ・リーグで頭ひとつ抜け出した。勝負どころを知る頼もしいベテランが、球史に残る混パを制すべく、けん引し続ける。
プロ17年の経験から小久保選手は、勝負どころを嗅ぎつけていた。チャンスはいきなり訪れた。初回だ。2死二塁。日本ハム・ケッペル投手の146km/h直球に力負けせず、先制の中前タイムリー。「連戦アタマの試合の初回、チームが乗っていくためにも、どうしても点を奪いたいところだった」。ペナント佳境を迎え、失速は許されない。この日の勝敗を分けるだけでなく、シーズンの行方の分岐点となるかもしれない打席と、主将は肝に銘じていたのだ。
集中力は2打席目以降も変わらない。3回は2死三塁で打席が回ってきた。今度は外角に逃げる140km/hの高速スライダー。最後は左手1本ですくうように右前へと運んだ。技ありの一打に「札幌ドームは開幕以来ですが、そのときの悪くないイメージで打席に立てているのかもしれません」。開幕3連戦では札幌ドームで、11打数6安打4打点と打ちまくった。その好データをバックに6回の3打席目は三塁線を抜く二塁打。今季8度目の猛打賞だ。
チーム最年長の経験が、イメージの基礎となっている。ただ、札幌ドームの好相性を覚えているように、自分に都合のいいイメージばかりを覚えているわけではない。100試合以上消化して上位3チームがゲーム差0(8月26日にソフトバンク、ロッテ、西武)となったのは、01年シーズン以来9年ぶり。この年、ホークスは9月12日に首位から3位転落してV逸した。「01年?(優勝は)近鉄がな。覚えとるわ」。小久保選手は17年間日記を書き続けている。苦い過去も決して忘れていない。もう悲劇は繰り返さないと心に誓ってバットを握っている。
もちろん、打つだけではない。4回はホールトン投手の、6回は川崎宗則選手の一塁ワンバウンド送球を難なく処理し、守備でも貢献。「今日は救援陣やろ」と本人は言うが、打って、守って、大きな勝利に貢献した。
小久保選手「毎日しびれる中、試合をやれるのは選手冥利(みょうり)につきる。思い残すことなくやりたい。こんな珍しい混パの中でやれるのは幸せ。残り20試合、全力で(優勝へ)走ります!」。
主将の力強い完走宣言の後、2位西武、3位ロッテとも敗戦。Lに1.5ゲーム差、Mに2差。頭一つ抜け出した。最短マジック点灯は4日。着実に優勝というゴールへ、近づいている。