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4回表1死一塁、小久保選手の二ゴロで一走松中選手は、遊撃手大引選手に併殺阻止のスライディング |
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7回表無死、右飛に倒れた松中選手は悔しそうな表情でベンチに戻る |
ホークスが大ピンチだ。オリックスに大敗を喫し、勝負の9月で、まさかの3連敗スタート。ホークスは昨年まで4年連続で9月を負け越しており、危機感がチームを包んだ。左手首痛から戦列復帰した松中信彦選手は意地の2安打を放ち、走塁でも気迫あふれるスライディングをみせたが及ばなかった。首位西武に1.5ゲーム差に離され「必死こいてやる」と悲壮な決意を示した。
背番号3の勝利への執念は届かなかった。オリックスに大敗した試合後。左手首と右ひざ、左足首の3カ所をアイシングしながら、松中選手が通路に現れた。「自分のやるべきことをやるだけです。打たないと明日も試合出られない。残り試合必死こいてやります」。この日、3週間ぶりに1軍復帰。いきなり3番左翼で先発出場。勝てなかった悔しさを胸に秘めるように、下は向かなかった。口調もショックを出さないためか、さばさばしていた。
勝ちたい思いは、誰よりもあった。8月12日に左手首三角繊維軟骨複合体損傷のため戦線離脱したが、最初に痛めたのは6月下旬のこと。2軍落ちするまで、痛み止め注射を打つなど我慢を続けていた。痛みに耐えきれなくなり、出場選手登録を抹消された後は、シーズン中に手術に踏み切るか悩んだ。導き出した結論は、痛みが少しでも治まるのを待つこと。練習試合含め2軍戦7試合に出場し21打数6安打。万全ではないが、バットを握れば、言い訳は口にしなかった。
4回の2打席目にチーム初安打となる中前安打。次打者小久保裕紀選手の二ゴロで、併殺崩しのスライディングを敢行。昨秋に右ひざを手術し、足を投げ出すような格好でしか滑り込めない中、体を張った。9回の二塁内野安打でも最後の一歩で右足を伸ばし、ベースを踏む際に若干右ひざをひねったが「大丈夫です」。オリックス中山投手に完投を許す中、ただ1人マルチ安打で意地を見せた。
チームにとって、決して小さな黒星ではない。これで9月は勝ち星なしの3連敗。首位西武とのゲーム差は1.5に広がった。4日から西武連勝、ホークス連敗となれば、5日に自力優勝が再び消滅する正念場だ。
ホークスには苦い過去もある。昨年まで9月は4年連続で月間負け越し。王会長が監督ラストイヤーだった08年は5勝18敗と大失速して最下位になった。ただ、こんなピンチだからこそ、選手各自が自分の仕事に集中することは何より大事だ。残り17試合。落ち込んでいる時間もない。
移動バスに乗り込む直前、秋山幸二監督がワンフレーズに力を込めた。「最後のひと踏ん張りを頑張らないといけないな」。チームに、そのひと踏ん張りを与えるため、松中選手は帰ってきたはずだ。