 |
4回裏1死二、三塁、左中間に先制の3点本塁打を放つ多村選手 |
多村弾で、35年ぶり珍勝利だ!ホークスは多村仁志選手の23号決勝3ランで勝利し、単独2位に浮上した。0-0の4回裏。1死二、三塁で左中間席に値千金の1発が飛び込む。打線はこの回の2安打3得点のみと苦しんだが、完封リレーで守りきった。2安打以下での勝利は球団では75年9月6日阪急戦(大阪)以来。“ひと振り勝ち”で連勝し、首位西武との1.5ゲーム差をキープした。
Vへの思いを乗せた打球はグングンと伸びた。4回1死二、三塁。多村選手のバットが、楽天ラズナー投手の7球目を芯でとらえた。「ボール球だった」と振り返る低めのフォーク。「よし、先制点」と犠飛をイメージした打球はひと伸びして左中間席へ着弾した。
先制の23号3ラン。秋山幸二監督が「タムは飛ぶなあ、ボールが。ナイスバッティング」と言えば、王貞治会長は「ミートしただけなのに、よく飛んだ」。ホームランアーティスト2人が舌を巻いた1発は、チームの勝利に導くには十分すぎるものとなった。
多村選手「二、三塁だったんで楽な気持ちで打てた。チーム一丸となって、その勢いが勝ちにつながった。やっぱり優勝したいんで」。
まさに一丸だ。勝利への執念と集中力が生んだ1勝だ。多村選手が「ラズナーはよかった」と話すように、4回1死までは無安打。だがオーティズ選手がチーム初安打を放つと、続く小久保裕紀選手が四球を選んだ。「小久保さんが四球でつないでくれたことが大きい」と多村選手は主将の気持ちを無駄にできなかった。カウント2-2と追い込まれても「甘い球が来るまで粘るつもりだった」。厳しいコースを2球カットした後に、決して甘くはない球を仕留めた。
自分のために、そして仲間のために絶対優勝する。この日、楽天福盛投手が今季限りで引退するニュースを目にした。94年ドラフトで横浜に同期入団。「びっくりした。彼なりの苦渋の決断だったと思う。あいつが3位で僕が4位。同期の分まで頑張っていかないと」。体は決して万全ではない。左太もも裏の違和感などもあり、先週末のオリックス戦2試合はベンチスタート。満身創痍(そうい)の中での強行出場だったが「関係ない。試合に出たら、その時のベストパフォーマンスを見せるだけ」。3試合ぶりのスタメンで、大きな仕事をしてみせた。
結局チームは、多村選手の1発が飛び出した4回の2安打だけで勝利を収めた。秋山監督も「こういう試合もあるね。ワンチャンスだったね」と笑みが止まらない。今季最後となる6連戦の初戦をあまりに効率のいい勝ち方で制し、首位西武とのゲーム差1.5をキープ。「ピリピリしながらも、それを楽しみながら」と多村選手。優勝の2文字をヒシヒシと予感させる、35年ぶりの珍勝利だった。