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先発の大隣投手は7回を無失点に抑え4勝目を飾る |
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4勝目を挙げた先発大隣投手はバギーカーにまたがりファンの声援に応える |
さあ、ここからだ。大隣憲司投手が7回2安打無失点の快投でチームの連敗を3で止めた。日本ハム打線に二塁さえ踏ませず、毎回3人ずつ計21人で終わらせて4勝目。吐きそうになる緊張感を乗り越え「今季最高」と自画自賛する投球を見せた。勝った首位西武との差は3.5ゲームのままだが、逆転Vへ望みをつないだ。
胃を握りしめられるような、極限の緊張感に襲われた。午後1時の試合開始直後。顔を引きつらせた大隣投手がマウンドにいた。「吐きそうやった。のどもカラカラで…」。もう1敗もできない-。優勝争いの重圧なのか。先頭の日本ハム田中選手へ、いきなり2球連続のボール。乱調の兆しで、逆に開き直れた。6球目で遊ゴロに打ち取ると、森本選手と稲葉選手はいずれも内角をえぐるような直球で見逃し三振。もう怖いものはなくなった。
胃液の代わりに?気を吐いた。2回1死から糸井選手に中前打を許したが、続く中田選手をチェンジアップで併殺に仕留めた。3回からは4イニング連続の3者凡退。唯一のピンチは7回だった。先頭の田中選手を中前打で出塁させ、森本選手にも7球目まで粘られた。だが、外角のスライダーで再び併殺を奪った。左手でグラブをたたき「よっしゃ!」と雄たけびをあげた。
「今日はできすぎというぐらい自分の投球ができた。いけるところまで精いっぱいやった結果。今年で一番、自分の投球ができた」
8回以降はリリーフ陣に託したが、7回を3人ずつ打者21人で終わらせた。四死球もゼロ。生命線の直球がさえた。奪三振9個のうち、直球での見逃し三振が5個。京都の実家から招待した両親の前で、堂々たる快投を見せた。
「脳内革命」でよみがえった。不振による5度の2軍降格を経て、8月に1軍復帰する直前。2軍で右肩リハビリ中の斉藤和巳投手に声をかけられた。「オマエがやらんと(チームは)きついからな」。かつてのエースから“救世主”に指名された。当時の成績は2勝8敗。「今から勝ちを重ねても、もう自分の勝ち負けは逆転できない。自分の勝ちよりチームに貢献しよう」。丸刈り頭の中身を切り替えた。鳥越裕介2軍監督からも「後半戦で頑張ればいいやん」と送り出された。
8月29日の1軍復帰以降は先発3試合で2勝無敗、防御率1.56と立ち直った。がけっぷちでチームの連敗を3で止め、秋山幸二監督にも「今日は大隣(の話)だけでいいよ。全部が良かった。持っているものを出し切ってくれた」と絶賛された。次回先発は19日、3.5ゲーム差で追う首位西武との直接対決が濃厚。再び、絶対に負けられない戦いに臨む。「今度は、えずくどころじゃすまないかも」とジョークを飛ばしたが、もう覚悟はできている。お立ち台でファンに訴えた。「優勝は全然、あきらめてないんで」。腹をくくって、やるだけだ。