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7回表1死一、二塁、多村選手は同点とする3点本塁打を放ちナインの出迎えを受ける |
あきらめるのはまだ早い!多村仁志選手が、意地の3ランでチームを鼓舞した。3点を追う7回表。そこまで無失点に抑えられていたロッテ先発マーフィー投手から、右中間へ26号の同点3ランをたたき込んだ。ミスと拙攻が続いた試合で、チームの雰囲気をガラリと変える1発。痛すぎるサヨナラ負けで逆転Vの可能性はさらに低くなったが、絶好調多村選手が最後の最後までチームを引っ張り続ける。
重苦しいムードを、ひと振りで変えた。3点を追う7回表。多村選手が、チームに勇気を与える1発を放った。1死一、二塁。そこまで0点に封じられてきたロッテ先発マーフィー投手の初球を、狙い澄ましたように振り抜いた。芯でとらえた外角低めへのチェンジアップは、ロッテファンが陣取る右中間席へ飛び込んだ。
「何とかしたいという気持ちでした」。絶対に落とせない一戦。その重圧からかチームは序盤にミス絡みで3点を失った。打線も5回までに3併殺と拙攻続き。逆転Vへのあきらめムードが漂ってもおかしくない状況だった。4番小久保裕紀選手が四球を選び、この試合初めて訪れた得点圏のチャンス。「何とかしたい」という思いは、試合を振り出しに戻すばかりか、ベンチ全体に明るさを取り戻した。
好調さを物語る1発だ。5回の第2打席では、同じく外角低めのチェンジアップをひっかけて遊撃への併殺打。無死一塁の好機をつぶす最悪の結果となった。だが、それを取り返すことができるのが今の多村選手。3ランについて「打った球種はわからなかったんですが、タイミングが合ってくれました」と振り返った。ここ7試合で4本塁打、打率5割。前打席で術中にはまった球を、初球から踏み込んで仕留めたのは偶然ではない。
前日は、千葉入りしたチームとは離れ横浜の自宅に戻った。関東遠征時などでしか会えない夫人と3人の愛娘と過ごすため。「(子供が)習い事をしているので、どこにも行けなかったけど」と話したが、愛する子供らとの時間は何よりのリフレッシュだ。
今季はこれで132となった出場試合数は07年と並んでプロ16年目で最多タイ。9月上旬のオリックス戦では2試合スタメンを外れるなど、コンディションは決して万全ではない。満身創痍(そうい)の体でバットを振り続けるのは、16年間で経験のない優勝の可能性が、まだあるからこそ。試合後は無言を貫き悔しさをあらわにした多村選手が、あきらめることは絶対にない。