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6回裏1死二、三塁、同点の右越え3点本塁打を放つ松中選手 |
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6回裏1死二、三塁、同点の右越え3点本塁打を放った松中選手は雄たけびを上げながら一塁へ向かう |
これぞ、主砲だ!千両役者だ!松中信彦選手が、起死回生の1発でチームの窮地を救った。3点を追う6回裏1死二、三塁で、西武涌井投手から、右翼ポール際へ10号同点3ランをたたき込んだ。エース杉内俊哉投手が中盤までに4点を失う苦しい展開を、一振りで打開。チームを劇的な勝利へと導き、12年連続の2ケタ本塁打もマーク。今季苦しみ抜いた主砲が、最大のヤマ場で意地を見せた。
魂のフルスイングだった。主砲が、一振りで絶体絶命のチームを生き返らせた。3点を追う6回裏1死二、三塁。松中選手が、西武涌井投手が投じた146km/hの内角直球を、あらん限りの力で振り抜いた。ライナー性の鋭い打球は、右翼ポール際へ着弾。大逆転Vを信じるファンの大歓声が、沈みかけていた本拠地全体を一気によみがえらせた。
松中選手「ファンの人をがっかりさせたことが多かった。優勝が決まる決まらないの、大事な試合で打てたことがうれしい。」
相手エースの快速球に、138試合分の悔しさをぶつけた。昨オフの右ひざ手術の影響で出遅れた今季は、この試合前まで9本塁打。シーズン途中に左手首を痛めたこともあり、スタメンを外れることも多くなった。14日のロッテ戦では終盤に代打で登場したが、2度好機で凡退。実はその2日前から肋間(ろっかん)神経痛で左脇腹付近を痛めていたが周囲には漏らさず、サヨナラ負けの責任を背負い込んだ。
翌15日の試合では、相性のいい渡辺俊投手が先発したにもかかわらずスタメン落ち。「本当に、悔しい…。練習するしかない」。主砲としてチームに貢献できていないもどかしさを消し去るには、バットを振るしかなかった。前日17日の全体練習では、通常の3倍の時間をかけてフリー打撃。この日も、全体練習前に若手に交ざり早出特打を行った。「信じて練習をやってきた。練習はウソをつかない」。ケガや不調に悩んだシーズンでも、野球の神様は12年連続の2ケタ本塁打を打たせてくれた。
この日は正午すぎに恵子夫人と2歳の次男が、わざわざ球場までお見送りに来てくれた。お別れのキスを交わした次男と、10月に誕生予定である夫人のおなかの子どもに活躍を誓い球場入りしていた。「やっと仕事ができたという気持ち」。苦しみ抜いた主砲が、最大のヤマ場で大きな仕事をした。