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11回裏2死一塁、サヨナラ2点本塁打を放つ小久保選手 |
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小久保選手はサヨナラ2点本塁打を放ちベンチに向かってガッツポーズ |
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11回裏2死一塁、サヨナラ本塁打を放った小久保選手はバンザイでナインの輪に飛び込む |
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8回裏、小久保選手は三塁前に送りバントを決める |
小久保裕紀選手が、8年ぶりのサヨナラ弾で死闘にケリをつけた。延長11回に15号2ランを左中間スタンドにたたき込んだ。秋山幸二監督が就任2年目で初めて投手にゲキを送るためマウンドに足を運ぶなど、執念采配をみせた一戦。8回には小久保選手自ら3年ぶりの送りバントを決断し、最後は通算399号で試合を終わらせた。首位西武に2.5ゲーム差。まずは目前の胴上げを阻止し、奇跡の逆転Vに望みをつなぐ。
通算399号は忘れられない1発となった。延長11回2死一塁。主将小久保選手は打った瞬間、両手を上げた。一塁側ベンチを見た。秋山監督の喜ぶ姿が目に映った。勝利を勝ち取るため、指揮官の笑顔を見るため、プロ17年目のスラッガーは戦い続けている。「がけっぷちなんで、みんなで勝って西武にプレッシャーをかけようと話していた。久しぶりに芯に当たった」。8年ぶり4度目のサヨナラ弾。ホームで待ち受けたナインの手荒い祝福が、喜びを倍加させてくれた。
秋山監督の勝利への執念をヒシヒシと体に感じ、最後の打席に立っていた。勝負どころで、2人の思いは重なっていた。8回無死二塁。秋山監督から言われた。「何としても走者を三塁に進めてくれ」。右打ちの選択肢もあった。だが、きっぱりと答えた。「バントします」。無死一塁のケースではセーフティーバントするつもりだった。勝つためにはどんなことでもする。主将として、選んだのは3年ぶりの犠打だった。
秋山監督の白星への執着心を目の前で見た。9回の守備で、秋山監督が自らマウンドへ歩み寄り、ピンチを背負った守護神馬原孝浩投手にゲキを飛ばした。マウンドで選手に声をかけるのは、監督に就任して初めて。ジッと横から2人のやりとりを見た。時に厳しく、時に優しく語りかける秋山監督の姿は、ダイエー時代に主将としてチームを優勝に導いてくれた背番号1のそれと重なったに違いない。心の底から闘志が沸き立った。
小久保選手のプロ野球選手としての歩みは、秋山監督とともに始まった。今年6月。首痛などで戦線離脱した。2軍調整中、若き日を思い起こした。「オレの初めてのキャンプのとき、秋山さんと同部屋やったんや」。ルーキーイヤーの94年春季オーストラリアキャンプ。西武からダイエーに優勝請負人として獲得された秋山監督の当時の姿を、誰よりも身近に見続けてきた。だからこそ、秋山ホークスの勝利に全身全霊をかけている。
もう一人の「主役」の存在も忘れていない。お立ち台で、6回に起死回生の3ランを放った松中信彦選手に言及した。「ノブヒコの活躍に勇気づけられた」。MK弾はこれで39度目。400発とともに“大台”へ、王手をかけた。
まだドラマは、終わっていない。西武のマジックは消えないが、ゲーム差は2.5に詰めた。胴上げ阻止だけではない。可能性ある限り、ギブアップはしない。「首の皮つながったわ。明日も明後日もつなげますよ。厳しいけどな」。残り5試合。秋山ホークスがこの勢いをキープし続ければ、奇跡が起こる可能性はある。