9回表2死、最後の打者井口選手を右飛に仕留めて力強くガッツポーズする和田投手

お立ち台で笑顔でファンの声援に応える2安打完投勝ちの和田投手（右）と逆転打の山崎選手

ロッテを破り、ナインを拍手で出迎える秋山監督

和田毅投手が魂の完投勝利だ。ロッテ打線をクライマックスシリーズ（CS）最少の2安打に封じ、9回134球を1失点で投げ切った。プレーオフ、CSでの勝利は自身初で、CS記録にあと1と迫る13奪三振もマーク。アドバンテージの1勝を含め、対戦成績を2勝1敗とした。今日16日も勝てば、7年ぶり日本シリーズ出場に王手がかかる。

両こぶしをにぎりしめ、力任せに振り下ろした。豪快なガッツポーズだ。9回134球を投げ抜いた和田投手が、全身で歓喜を表した。2安打1失点の完投勝利。「昨日、成瀬君に完投されて、すごく悔しい負け方だったので、完投し返してやろうという気持ちだった」。狙い通りの「完投返し」を決め、端正な顔は緩みっぱなしになった。

試練の船出だった。1回1死から、今季2本塁打のロッテ清田選手に先制ソロを浴びた。内角低めのチェンジアップ。決して甘い球ではなかった。「やってはいけない先制点を与えてしまった」。後続にもファウルで粘られ、1回だけで39球も要した。

最多勝左腕の真骨頂は2回からだ。1回を投げ終え「ひじが（前方に）入りすぎていた」と気付いた。我慢強く愚直に低めを突く今季のスタイルを取り戻し、ロッテ打線をねじ伏せた。走者を出したのは2回1死から金泰均選手に左前打を許したのが最後。以後の23人を完全に封じ込め、13奪三振をマークした。

「大丈夫です」。8、9回の登板前に高山郁夫投手コーチから続投の可否を確認されても、平然と言い切った。最終回のマウンドへ向かう際には、真っ赤に染まった観客席からの拍手に包まれた。「鳥肌が立った」。完投しての2安打は、CS史上最少記録だった。

同い年の戦友のためにも負けられなかった。試合前の食堂で、前日に敗戦投手となった杉内俊哉投手が隣のテーブルにいた。今季はライバルとして競うように白星を積み重ねた仲。肩を寄せ合って2人だけで密談した。杉内投手は「（内容は）言えるわけない」と口を閉ざしたが、ロッテ対策も無念も引き継いだ和田投手は「スギ（杉内）の借りを返す気持ちだった」と胸の内を明かした。

新球も温存できた。8日の練習試合で試投したカットボールは「苦しかったら投げようと思ったけど、そこまでいかなかったので」と封印した。チームはアドバンテージの1勝を含めて2勝1敗と息を吹き返し、今日16日に王手を狙う。和田投手は、日本シリーズ先発に向け準備に入る。「投げる、投げないにかかわらず、自分のベストを尽くしたい」。救世主は再び出番がめぐってくると信じ、ほおを引き締めた。