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日本シリーズ進出王手をかけ喜び合う馬原投手(左)と山崎選手らホークスナイン |
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9回表2死、金泰均選手を三振に仕留めガッツポーズを見せる馬原投手 |
さあ悲願の日本シリーズ進出に王手だ。馬原孝浩投手が「悪夢」を振り切って1点のリードを死守した。9回に登板し、完ぺきな10球で3者凡退。05年プレーオフで悪夢の逆転負けを喫したロッテに6年越しのリベンジを果たした。2連勝のチームは3勝1敗で球団初のクライマックスシリーズ(CS)突破に王手をかけ、17日の第4戦に臨む。
馬原投手が気迫で黒の軍団をねじ伏せた。右手を握りしめると同時に歓喜がはじけ、引き締まっていた口元から白い歯がこぼれた。「とにかく勝てたのがすごくよかった」。1点差を死守して勝利のハイタッチ。真っ赤に染まった観客席も燃えるようにわいた。しばらくの間、クローザーとして至福の喜びに浸った。
「1-0の場面で出て行くのは、ずっと頭でイメージしていた」
こん身の10球目は金泰均選手の外角低めへ152km/h直球を投げ込み、見逃し三振でフィニッシュ。何度も“予習”していた通りの結末だった。ガチンコ勝負の舞台は26日ぶり。実戦感覚は毎晩のイメージトレで補った。ベッドに入る前、DVDで自身の映像を繰り返し見た。理想とする05~07年の投球が収録された1枚だ。「期間が空いたので、イメージだけはいいものを持ちたかった」。調子のバロメータとなる見逃し三振を連発する姿を目と頭に焼きつけた。
5年前の悪夢も振り払った。05年10月17日、同じロッテとのプレーオフ第2ステージ最終戦。1点リードの8回1死一、二塁から里崎選手に決勝の逆転二塁打を浴びた。どんな敗戦の後でも「ロッカーを出れば冷静になれる」という切り替えの早い男にとっても、忘れられない痛恨の試合だった。今年9月20日の西武戦、1点リードの9回2死一、三塁で球場の誰もが息をのむ異様なムードにも「あんな雰囲気は05年のプレーオフ以来」と思わず当時が脳裏によぎった。この日は1死走者なしで里崎選手を迎えたが、宝刀フォークで空振り三振に仕留めた。
1回に相手のミスで手にした1点を執念の継投で守り抜き、チームは3勝1敗で球団初のCS突破へ王手をかけた。「馬原も良かったね」とねぎらった秋山幸二監督は「王手?あと1つ勝つのが大変なんだよ。頑張ります」と引き締めた。誰にも慢心なんてない。帰りの車に乗り込む馬原投手も、もはや次戦しか眼中になかった。「まだ明日がある。日本シリーズは決まってない。気を抜かず、いい投球ができるようにしたい」。あの屈辱から17日で丸5年になる。今度は未体験の歓喜と、今年2度目のビールかけが待っているはずだ。