昨季限りで現役を引退した攝津正さんの引退セレモニーが、3月2日(土)のタイガース戦(ヤフオクドーム)の試合前に行われました。
ユニフォーム姿でグラウンドに登場。まず自身の軌跡を振り返るVTRが、新しくなった世界最大級のホークスビジョンで映し出されると「最初の登板とか、こんなこともあったな」としみじみとした思いで見つめていました。
その後マイクの前で挨拶。「このような素晴らしいセレモニーを行って頂き、心から感謝を申し上げます。小さなころから夢見たプロ野球という世界で10年間プレーできたのは、支えてくれた監督やコーチ、スタッフ、家族、なによりあったかい声援を送ってくれたファンの皆様のおかげだと思っております」と感謝の意を述べ、「これからまたホークスに呼んでもらえるよう、頑張っていきたいと思います」と将来像を語りました。
そして「ピッチャー攝津正、背番号50」のコールと共にマウンドに立ち、高谷裕亮捕手に向かって「最後の1球」を投じました。これが右打者の外角低め一杯への投球。沢村賞や最多勝などタイトルを総なめにした伝家の宝刀の制球力は、今もなお健在でした。
セレモニーを終えた攝津さんは「緊張して、事前に考えたスピーチが全くできませんでした」と苦笑い。さらに「本当はグラブをスタンドのファンにプレゼントしようと思っていたんです。子どもが捕ってくれたら嬉しいな、と思って」としていましたが、これも緊張から忘れてしまったそうです。
ファンはもちろん、チームメイトからの信頼も厚かった攝津さん。会見場には森唯斗投手をはじめ東浜巨投手や和田毅投手、サファテ投手らが駆けつけて「ユニフォーム姿で撮りたい」と写真に収まっていました。現役中は喜怒哀楽を敢えて封印してマウンドに立っていた攝津さんでしたが、この日は笑顔、笑顔の一日となりました。
2019年3月2日掲載
田尻 耕太郎(スポーツライター)