10回表無死一塁、松田選手の捕邪飛で二塁へタッチアップ、好走をみせた一塁走者川崎選手

ホークスが、楽天との「本拠地CS開催」をかけた直接対決第1ラウンドを制した。延長戦に突入した総力戦。10回表に川崎宗則選手が松田宣浩選手の送りバント失敗をフォローする好走塁で白星をたぐり寄せた。負ければ3位転落だった一戦で、がっちりと2位を死守。首位日本ハムとも3.5ゲーム差をキープし、クライマックス進出マジックも「1」とした。迷いはなかった。川崎選手の一瞬の機転が、勝敗の分岐点となった。

川崎選手「（打球が）上がった瞬間に（タッチアップで）行こうと思った。ああいうプレーはなかなかない。初めてです。」

試合後も興奮冷めやらない様子で振り返ったのは、延長10回だ。無死一塁で一塁走者だった。1番松田選手への初球。送りバントを試みた打球は、バックネット付近への飛球となった。チャンスはついえたかに見えた。だが、すばやく、川崎選手は一塁へ帰塁。捕手中谷選手がジャンピングキャッチしたのを見ると、二塁へスタートをきった。

1死二塁。犠打成功と同じ状況に持ち込んだ「ビッグプレー」に、ムードメーカー森本学選手も乗った。交流戦V打を放った男が、右中間へ決勝の三塁打。試合前には社会人シダックス時代の恩人、野村監督にあいさつに行くと「クビ大丈夫か」と先制パンチを食らったが、グラウンドできっちりカウンターパンチ。「ヒーローインタビューで何言おうかな思いながら（三塁まで）走りました」と、してやったりの表情だ。

クライマックスシリーズ（CS）本拠地開催もかかる楽天との直接対決第1ラウンドを総力戦で制した。この日、発熱は下がったが、大事をとって攝津正投手が仙台入りを見合わせていた。「勝利の方程式」の要を欠く救援陣が、終盤にリードをフイにする苦戦を強いられた。野手でも多村仁志選手、本多雄一選手の2人が途中交代する窮地。負ければ3位転落が待ち受けていたが、スタメン以外の選手で5安打2打点などチーム一丸となって、野村楽天が満を持してエース岩隈投手を送り込んできた一戦を手中にした。

楽天を1.5差に突き放すと同時に、4位西武が敗れたことでCS進出へも「王手」をかけた。しかも、今季ナインに課した「1点にこだわる野球」が凝縮されたような川崎選手の好走塁に、秋山幸二監督の笑みがこぼれるのも当然だ。「初戦から、しびれる試合だったな。（川崎は）いいタッチアップだったね」。その背番号52に一歩を踏み出す勇気を与えたのは、秋山監督にほかならない。9月に入って8盗塁を決めながら、盗塁死も6を数えた川崎へ、「思い切りは忘れるな」と助言をおくっていた。

30日の先発はプロ2年目で、1軍登板2試合目の岩崎翔投手。勝てば、楽天に引導を渡すのと同じくらいの意味がある。