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背番号89のコートを着て2軍選手を見守る王会長 |
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秋季キャンプに訪れた王会長は、打撃練習する城所選手に熱っぽく指導する |
背番号89がグラウンドに帰ってきた。王貞治球団会長が4日、秋季キャンプを訪れて393日ぶりの“現場復帰”を果たした。B組(2軍)の若手野手に対し、時にはバットを握っての熱血指導。朝7時半に羽田空港を出発して、夜間練習まで目を光らせた。来春のキャンプ参加も明言。チームが課題とする選手層の強化に向け、これ以上ない切り札が加わった。
王会長がグラウンドに仁王立ちした。東京から空路で宮崎に到着すると、B組が練習するサブ球場へ車を横付け。背番号入りのジャンパーを着込み、息つく間もなく指導を始めた。球場を去るまでの約6時間で、いすに腰掛けたのは昼食時の約35分間だけ。9月21日に胆のう摘出などの手術を受けたばかりの身ながら、実に5時間以上も立ちっぱなしで動き回った。
王会長「こっちは立ってるだけ。選手もあれだけ頑張ってるわけだから。(グラウンドだと)いろんな意味で気持ちが乗ってくる。」
背番号89を身につけたのは、監督として最後の試合となった昨年10月7日の楽天戦以来393日ぶりだ。昨秋と今春のキャンプでは秋山幸二新監督を気づかい、あえて現場に顔を出さなかったが「秋山監督の体制がしっかりできてきたからね」と、満を持しての“現場復帰”。グラウンドに立てる喜びが原動力だった。
熱血指導にも力が入った。まずは24歳の城所龍磨選手を密着マーク。打撃練習中に疲れて座り込む姿を見ると「それくらいで息を切らしてどうする!練習が足りん!」と野太い声で一喝した。初指導となるルーキー立岡宗一郎選手に対してはみずからバットを握り、スイングも披露して見せた。このほかにも山崎勝己選手と荒川雄太選手の捕手2人に打撃指導。立岡選手が「自分のクセをすぐに見抜かれた」と驚けば、山崎選手は「王会長は特別な存在。ありがたいです」と身を引き締めた。
情熱は尽きることを知らない。「今回は(6日まで)3日間しか見られないけど、本当はもっと長い間いたかった」。球場を離れた後もB組宿舎で行われる夜間練習まで見届けた。さらには「来年は春のキャンプにも(行きたい)ね。ファームに限定することもない」と明言。来春以降は1軍選手も含めた指導に乗り出す意欲を見せた。
今季は選手層の薄さが露呈しただけに、若手の育成はチームの重要課題だ。「春には向こう(1軍)でやれるようにね。(自分の存在が)刺激になってくれれば」。まずは3日間に全精力を傾ける。秋山監督も「どんどん元気になってほしい」と期待した。帰ってきた背番号89が、若タカたちを大きく羽ばたかせる。