「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」はいよいよ最終日。福岡ソフトバンクホークスジュニアは決勝トーナメントへと臨みました。準決勝の東京ヤクルトスワローズジュニア戦では、接戦を制し連覇に王手をかけます。そして迎えた決勝戦の相手は、トップチームが日本シリーズで対戦した阪神タイガースジュニアです。互角の打撃戦を繰り広げますが、結果は一歩及ばず。惜しくも連覇には届きませんでしたが、嘉弥真新也監督は就任1年目で準優勝を果たしました。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() ホークスジュニア |
1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 4 |
| スワローズジュニア | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 3 |
ホークスジュニア:萩原、石光-石光、宮城
スワローズジュニア:太田、柳澤-東海林
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| タイガースジュニア | 1 | 2 | 2 | 0 | 0 | 1 | 6 |
![]() ホークスジュニア |
2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 |
タイガースジュニア:中川、鈴木-馬野
ホークスジュニア:荷本、石丸、喜多、福間-石光
4日間にわたる激闘を見せたホークスジュニア。最終日は決勝トーナメントの2試合を戦った。初戦、準決勝の東京ヤクルトスワローズジュニア戦は逆転に次ぐ逆転の展開に。
まず先制点を挙げたのはホークスジュニア。初回、この試合2番に入った石光奏都選手が逆方向への2塁打を放ち、その直後に意表を突いた三盗で得点のチャンスをつくる。1死2・3塁となり、4番の宮城大心選手が右方向へのゴロを打ち石光選手をホームに還した。
先発は萩原蒼大選手。負けたら終わりの大一番でも臆することなく、捕手のミットへ投げ込んだ。立ち上がりから2イニングは完全投球、特に2回は三者連続三振で終え相手打線に隙を与えなかった。
中盤からは1点を争う展開を見せる。3回裏に2本のヒットを浴びるなどで逆転を許してしまうが、ホークスジュニアはここまで繰り広げてきた激戦の中で、逆境をも力に変える能力が身についていた。
直後の4回表に1死2・3塁と早くもチャンスをつくると7番・髙本琉希也選手が同点タイムリー。続く石井爽介選手の内野ゴロの間に勝ち越した。
その後再度追いつかれるも、5回表に2死ながらランナー2塁と得点圏の場面で、打席には5番の笹尾聖真選手。カウント2-1の4球目、高めの球をレフト前へ弾き返すタイムリーヒットを放ち、これが決勝点に。4−3とシーソーゲームをものにし、ついに連覇へあと1勝まで来た。
決勝戦の相手は阪神タイガースジュニア。日本シリーズと同じ組み合わせの頂上決戦となったが、試合内容はこれまでと一転して打撃戦の様相を見せた。
先発は前日の試合でも登板した荷本大輝選手がマウンドへと上がる。初回の立ち上がり、タイガースジュニアの強力打線に捕まり先制されるも、その裏すぐに笹尾選手と山下夏輝選手の1・2番コンビを起点に2点を奪い逆転する。
直後の2回に2点を奪われ再逆転されるも、裏の攻撃ではこの日8番に入った信樂隼大朗選手が待望のホームラン。今大会チーム初の一発で試合を振り出しに戻した。ここからは両チームによるホームラン合戦が繰り広げられていく。
3回表に先頭から2者連続ホームランを浴びるが、その2点ビハインドの5回裏にホークスジュニアは石光選手が左翼へのホームランを放ち、4-5と1点差に詰め寄る。しかし最終回の6回表に再度一発を浴びてしまい再び2点差に。裏の攻撃で逆転を期するが惜しくも及ばず、あと1勝のところで連覇には届かなかった。
しかし、2年連続での決勝進出そして準優勝という堂々たる結果を残し、2025年の福岡ソフトバンクホークスジュニアはその戦いを全うした。
もちろん優勝したかったし、優勝させてあげたかったですが、選手たちは本当に全力で頑張ってくれました。準優勝ですけれども最高の結果になったと思います。
自分たちで考えられるようになったことが何よりの成長でした。周りへの気配り、挨拶そして試合での声掛けなど行動の質が変わりましたので、今後が楽しみです。
僕から選手たちへの伝え方ですね。選手たちの年代にどう声をかけたら響くかという点で、僕も成長できました。特に伝えたのは“切り替えが大事”ということで、先にも出た試合での声かけだったり、練習であまり身が入ってない時の声かけだったり。さまざまなケースでのコミュニケーションを彼らから勉強させてもらいました。
選手たちとは友達のお兄ちゃんのようなイメージで接しているので、このスタンスは崩さずに自分でも勉強して知識や経験を吸収していきたいです。
これから中学・高校と進んでいく過程でも、今日最後に負けた悔しさを忘れたら成長はないから、この悔しさを持ってまた次のステージで頑張ってほしいと伝えました。
“絶対に打つ!”という気持ちでした!スタンドからの応援が力になりました。
これは自分が打って勝つしかない!という気持ちで次の打席に立ちました。前の守りを終えてからみんなで円陣を組んで、気持ちがもっと高ぶりました。
毎日練習を重ねているので、自信を持って試合に臨めています。なので、どんな場面でもしっかりプレーできていると思っています。
キャッチボールから大切にしていて、ボールの握り替えを意識して投げています。
はい!練習もですし、壁当ても自主的にやって自分の形があるので、自信を持って守っています。
琉希也なら絶対やれる!頑張れ!などのメッセージをもらいました。
守備力、あとバッティングのミート力が上がりました。
すごく緊張もしましたし、関東遠征で一度対戦して負けていたので、勝てて嬉しかったです。
この試合活躍したいという気持ちと、今まで練習してきたことを出すだけと思って試合に入りました。
必ずピッチャーを楽にさせようという気持ちでしたので、何としても点を取りたいなと思っていました。打てた時は嬉しい気持ちでいっぱいでした。
自分が試合に出る出ない関係なく、仲間を応援し続けていることです。
流れを変えようと思っていましたし、気持ちが高ぶっていました。打った時に感触は良かったのですが、(フェンスを)越えるかどうかまでは分からなかったので、越えくれて良かったです。
勝った時の喜びや負けた時の悔しさを味わえました。野球以外の返事や礼儀など生活面もそうですし、レベルの高い人たちと一緒に野球をやることで、自分も野球が上手くなれた期間です。
所属チームが応援旗を作ってくれました。それが一番嬉しかったですし、みんなのために恩返しをしたかったので、今日打てて恩返しができたと思います。
アニマルというトレーニング(さまざまな動物の動き方をして、体幹や瞬発力などを鍛える)で、これを続けることでバッティングでも下半身を使えるようになりました。
全員が仲間思いで、チームワークがあります。ここで解散は悲しいですけれども、また新たな地で頑張っていきます。
完璧でした。打った瞬間フェンスを越えると思いました。三代(祥貴)コーチに「決勝でホームラン打ちます!」と言ったので、有言実行の結果になりました。
1点ずつ取っていこうと考えて、これまで通り打席に入りました。特に狙ってはいなかったですが、結果ホームランになってくれて良かったです。
「ピッチングでは嘉弥真監督から、「ゾーンに思い切って投げてみよう」とアドバイスをもらって、実践したら球速がどんどん上がっていきました。バッティングではちょうど昨日の夜に三代コーチから「もう少し右中間を意識して打ってみたら?」と言ってもらって、今日の準決勝で早速右中間への二塁打を打てました。
自分より上手い人がたくさんいたので、そこを見習って成長できました。この先高校でも注目される選手になって、ドラフト1位に名前が上がる選手を目指しています。プロでも活躍して、引退した後はホークスジュニアのコーチや監督になりたいです。
負けたら終わりの準決勝。先発した萩原蒼大は持ち前である強気の投球を見せ続けた。
「普段から気持ちの強い子です」そう語ったのは父の一盛さん。2試合目のマリーンズジュニアに勝利した試合後も、「配信で地元の友達が見ているので、“俺を見てほしい”」と最後に力強く述べており、マウンド上でも純粋に自分を表現していた。
地元での所属チームでは打撃にも自信を持っていたと語るが、ホークスジュニアでは投手一本に絞っている。一盛さんもその決断に関わっていた。
「バッティングの面ではホークスジュニアに入って打ち砕かれたのだと思います。親としても見ていて、ピッチャー一本だろうなとは思っていました。聞いていたかどうかは分からないですけども(笑)」
投手としてその一芸を磨き続ける中、「自分のチームの時は完全に力で押すタイプでしたけども、打たせて取る投球も織り交ぜるようになったんです」と約4ヶ月の間での変化を語った一盛さん。
それにはある要因があることを、一緒にその快投を見守っていた母の梨沙さんが明かしてくれた。
「キャッチャーの(石光)奏都君のリードがすごいと。もう完全に任せると言っていました。投げる時の安心感がすごくあるそうで、新たにそういう仲間を見つけられたんだと思うと嬉しくなりました。」
ホークスジュニアに入団後、グラウンド外での変化もあったそう。梨沙さんが上に続けて語ってくれた。
「すごく礼儀正しくなりました。家族にも“ありがとう”って言う回数がすごく増えました。小さなことに気づいて声をかけてくれたりなど、野球を通じていろいろな面で視野が広がったのではないかなと。
この大会でも“みんなのために”と、想いを背負って投げていたと感じています。地元からも試合後に『見たよ!』『これからも頑張って!』とメッセージが届いていて、みんながいるからこそ、今の蒼大があると改めて思いました。」
全5試合のうち3試合に登板し、2先発。2勝負けなしと投手陣の屋台骨を支えた。嘉弥真監督が掲げた「守りの野球」を体現する一人となり、日本一を争う舞台へと確かに導いた。
待望の一発は大一番で放たれた。決勝戦の2回裏、信樂隼大朗の放った打球は高々とアーチを描き、フェンスを超えていった。チーム初ホームランでもある同点弾にベンチそしてスタンドが大いに沸いた。父の誠一郎さんも「本人はとても悩んでいたと思いますが、ホームランが出てすごく嬉しかったです」と安堵の表情を見せた。
ホークスジュニアが誇る右の大砲は、ここ3試合苦しんでいた。初戦に決勝となるタイムリー二塁打を打って以降、快音が鳴りを潜めていた。ただ、初戦の試合後に「ボールの下を叩き過ぎてしまったので、修正したい」と明確にポイントを把握していた。
本塁打についての感触を問うた際、「斜めに切るようなイメージでスイングしました」と、決勝の大舞台にしっかりと間に合わせた。
ホークスジュニアへは昨年の5年生時から挑戦しており、最後のチャンスとなった今年ついにその座を掴んでいた。
毎週の活動には地元の宮崎から誠一郎さんの運転する車で通っており、最大5時間半ほどかけて移動していた。親子での車内空間は、一つの成長プロセスでもあった。
「選手たちのレベルが高いことも刺激になっていましたし、バッティングのことで悩んでいたこともありましたが、『1回1回を大事に積み重ねていけば、最後に必ず良くなるから』というのは常々言っていました。」
その助言を一発回答で示した隼大朗。持ち前の長打力を磨くために、技術以外にも欠かさなったことがあった。
「体重を増やすために食トレは頑張ったと思います。ご飯をたくさん食べたのですが、前も500gほど食べていましたが、今は800g以上食べますね」
このことに関して、ホークスジュニアの仲間と過ごした際のエピソードを補足してくれた。
「宮城(大心)さんのところに泊まらせてもらった時に、1kgくらいのお米を平らげていたと聞いたので(笑)、食事は本人なりに頑張ったのだと思います。」
次のステージでも活躍はまだまだ続いていく。野球人としてさらにステップアップしていくために、誠一郎さんはこうメッセージを送った。
「まだまだ野球人生は続くので人間性を磨きながら、技術的には守備をもっと頑張って打つことと一緒にどんどん上達していってほしいです。」
和製大砲が描いた最高のアーチの裏には、宮崎から描き続けた成長の軌跡があった。