初めて立ったヤフードームのお立ち台。陽耀勲投手の第一声は日本語でした。
「ありがとうございます」。
とても流ちょうな口調でした。ホークスに入団してもう5年。溢れんばかりの才能が、本格的に開花しようとしています。

9月7日（火）のイーグルス戦（ヤフードーム）。大事な本拠地6連戦の先陣を任されたマウンドでしたが、余計なことは何も考えず平常心で臨みました。初回の先頭打者を許しましたが、併殺打でしのいでゼロスタート。2回にも無死二塁のピンチを迎えましたが、「この日は特に走っていた」というストレートで山崎武選手と中村紀選手の強打者2人から連続空振り三振を奪いました。
7回途中まで投げて無失点の好投。今季2勝目は、本拠地ヤフードームで初めての先発白星でした。
「ホームで勝つのは嬉しいです。たくさんの応援があるし、非常に投げやすかったです」。

2006年に台湾文化大からホークスに入団。外国人選手ですが、このチームがプロ野球人生のスタートです。この年にはWBC台湾代表にも選出され、川崎宗則選手やイチロー選手（マリナーズ）らと対戦もしました。
自慢はストレート。ファームでは最速155km/hを計測したこともあります。しかし、これまでは精神面の脆さから、1軍では結果を残せずにいました。
今季は一念発起。これまでは日本語でコミュニケーションを図ることに消極的でしたが、積極的に話しかける努力をしました。球団の赤井通訳に週3回のレッスンも受けて、平仮名を書く練習までしています。この日のマウンドの「平常心」は陽投手の成長の証でした。

9月は先発陣が崩れるケースが目立っていましたが、陽投手の快投でまた流れが大きく変わりました。残り14試合。一丸となって同じ目標に向かって戦うだけです。